おおた:最後に、中学受験への関心を寄せるみなさんへのメッセージがあれば。
高瀬:「失敗はない」と言いたいです。青少年に関しては「失敗」って言葉はいらない。『勇者たちの中学受験』の3つのエピソードのどれも、失敗じゃありませんよね。これもね、渦中じゃないから言えることなんでしょうけど。客観的に見たら失敗ではないようなことが、自分の子ということになるとなぜ失敗に見えてしまうのか。
おおた:面白い表現ですね。
中学受験に失敗なんてない
高瀬:確かに中学受験って二度とできないし、時間的なリミットはありますけど、どこの中学に行くかなんて、80年も生きる人生の中で見れば誤差みたいなものに、なぜ私たちはこんなに心を搔きむしられるような気持ちで関わらなきゃいけないのかと思うことがあります。おおたさんの本を拝読することによって、それを再認識して、「失敗はない」と思いました。
おおた:なんでそんなふうに大人がなっちゃうのかっていうとやっぱり、社会状況的に大人も不安だからじゃないですか。仕事にしても、社会全体の状況にしても、先行きの不透明感が強すぎて、大人たちの不安がそのまま子どもたちに投影されているって面はありますよね。
朝比奈:そもそも社会が不安定で未来が見えてないわけですよね。だったら何が失敗なのかもわからないということなのに、見えない敵にみんなで怯えて、そこから子どもを守ろう守ろうと必死になっちゃっている。そこへの有効な対抗策はやっぱり、高瀬さんが今おっしゃったように、たかが中学受験に失敗なんてないんだっていう前提を共有することではないでしょうか。
こういう紆余曲折を経てこういう学校に行くことになりました。こういう過程を通ってこういう大学に通い、こういう仕事を選べるようになりました。そこに「成功」も「失敗」もなくて、すべてが「経験」です。誰とも比べられないし、この人だけのものです。みんながそう思える社会にしていくことが大事だと思います。なぜ見えない敵に怯えなきゃいけないんだろうってことに気づけるような作品がこれからも書けたらいいなって思うし、その思いを共有してくださる仲間がいるのはすごく心強い。
「失敗はない」っていう今の高瀬さんの言葉を、私も広めていきたいなと思っています。
おおた:実はエピソードⅡのハヤト君のお母さんも、今回の原稿を見てもらってから、同じことを言ってました。「渦中にいると、失敗するわけにはいかないと思い込んじゃうのかも。結局、失敗なんて1つもないのにねぇ……」って。「中学受験に失敗なんてない」っていうのが今日のファイナルアンサーなのかな。お二人と思いを共有することで、私も励まされました。ありがとうございました。
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