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F・フクヤマが語る「米国の分断と民主主義の危機」 自由主義への敵対心が世界を間違った方向へ

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『歴史の終わり』で、人類の政治制度は「自由民主主義」に収斂していくと説いたフランシス・フクヤマ氏。著書出版から30年を経て、現在の混乱する世界をどう見ているのか。

フランシス・フクヤマ氏のポートレート
フランシス・フクヤマ(Francis Fukuyama)/スタンフォード大学 シニアフェロー。1952年米国シカゴ生まれ。コーネル大学で西洋古典学を学んだ後、ハーバード大学大学院で政治学博士号を取得。ランド研究所、米国務省を経て、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院教授。1989年11月、外交専門誌『ナショナル・インタレスト』に発表した論文「歴史の終わりか?」、および1992年の著書『歴史の終わり』は冷戦終焉後の世界で大きな注目を集めた。現在は、スタンフォード大学でシニアフェローを務める。(写真:Nora Sulots)

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著書『歴史の終わり』(1992年出版)で、人類の政治制度は「自由と民主主義」以外に選択肢がないとする思想史上の結論を出したフランシス・フクヤマ氏。米国の分断と民主主義の退潮、そして21世紀の世界経済を牽引してきた中国の変調が明らかになる中、両大国と世界の行方をどうみるのか。フクヤマ氏の現在の考えを聞いた(インタビューは9月末に実施、 構成:秦卓弥)。

──フクヤマさんは、1990年代から2000年代初頭の新自由主義政策を批判してきました。現在のアメリカの民主主義をどう評価しますか。

今、アメリカの人々が議論しているのは税負担や移民問題といった政策ではない。まるで人々が2つのチームに二分されてしまったかのようだ。これは、分断された情報空間が原因だ。それぞれの陣営が異なる事実を信じているのだ。

例えば、2021年1月6日にアメリカの連邦議会議事堂を襲撃した人々は、必ずしも民主主義に敵対しているわけではない。襲撃者の多くは、バイデン大統領が前回の選挙を「盗んだ」と本心から信じて、非常に腹を立てているのだ。

インターネットの登場により、別の現実を提示するテクノロジー空間が生まれ、人々はその真偽を問わずに信じるようになっている。

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