『歴史の終わり』で、人類の政治制度は「自由民主主義」に収斂していくと説いたフランシス・フクヤマ氏。著書出版から30年を経て、現在の混乱する世界をどう見ているのか。
──フクヤマさんは、1990年代から2000年代初頭の新自由主義政策を批判してきました。現在のアメリカの民主主義をどう評価しますか。
今、アメリカの人々が議論しているのは税負担や移民問題といった政策ではない。まるで人々が2つのチームに二分されてしまったかのようだ。これは、分断された情報空間が原因だ。それぞれの陣営が異なる事実を信じているのだ。
例えば、2021年1月6日にアメリカの連邦議会議事堂を襲撃した人々は、必ずしも民主主義に敵対しているわけではない。襲撃者の多くは、バイデン大統領が前回の選挙を「盗んだ」と本心から信じて、非常に腹を立てているのだ。
インターネットの登場により、別の現実を提示するテクノロジー空間が生まれ、人々はその真偽を問わずに信じるようになっている。



















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