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電池資源の「中国排除」が招くのはEV価格の上昇だ 安全保障と経済性のバランスをいかに取るか

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リチウム、コバルト、ニッケルなど、車載電池の材料に用いられる重要鉱物の権益を中国が買いあさっている。電池のサプライチェーンから中国企業を排除することは現実的なのか。

電気自動車に搭載されたバッテリーのイメージ写真
電池のコストが上がれば、EVの価格も高くなる。(写真:chesky / PIXTA)

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今年8月に成立したアメリカのインフレ抑制法(IRA)は、電気自動車(EV)に搭載する電池のサプライチェーンから中国企業を排除する側面を持つ。とりわけハードルが高いとされるのが、電池材料に用いられる重要鉱物の「脱中国」である。

車載用電池に使われる鉱物といえば、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、黒鉛などがある。中でも重要度が高いのが、リチウムイオン電池に欠かせないリチウムと、安全性を高めるコバルトだ。

リチウムもコバルトも、その埋蔵・生産が中国に偏っているわけではない。リチウムの埋蔵量が多いのは南米やオーストラリアで、中国は4番手。カナダやアメリカにも鉱山はある。

権益を買いあさる中国勢

ただ、急増するEV需要に対しリチウムの供給力は不足気味。供給量を増やそうにも、資源開発には10年単位の時間がかかる。それを見越した中国勢はここ数年、南米やアフリカでリチウム鉱山の権益を買いあさり、鉱山開発も急ピッチで進めている。

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