ミシガン州に移り住み、共和党のボランティアとして1000件を超える戸別訪問をした筆者が見たトランプ信者の実像。
私がミシガン州の共和党事務所で選挙ボランティアとして戸別訪問を始めたのは、2020年3月のこと。スマートフォンにダウンロードしたアプリの指示に従って住宅地を訪ね、アンケートに答えてもらうのが役目だった。
ボランティア初日、私は熱烈なトランプ応援団に出会った。
渡された赤い帽子
ドアの呼び鈴を押して待っていると、2匹のセントバーナードと一緒に50代の白人男性であるジョンが出てきた。
「何だって、ミシガン共和党のボランティアだって。そこに座って待っていてくれ」と、玄関先にあったパイプ椅子を指さす。
すぐに戻ってきたジョンの手には、赤い帽子があった。「トランプ 2020 アメリカを偉大なままに!」と刺繍してある。
「この帽子を20個買って、いろんな人に渡しているんだ。あんたにもやるよ。オレは共和党員ではなく、無所属だな。今でも自動車産業で働いているんだ。組合の委員長をやったころには、民主党にも投票した。2008年にはオバマにも投票した。けれど、オレにとって一番大切な政策は、中絶の是非についてなんだ。聖書の解釈では、中絶は殺人にあたるので、中絶はどうしても認めることはできない。トランプは、これまでで最も中絶に反対している大統領だから応援しているんだ」
熱くて、陽気なたちのトランプ支持者だった。
私は2020年のアメリカ大統領選挙を取材するため、ミシガン州に移り住み、トランプ陣営である共和党のボランティアとして戸別訪問しながら、選挙戦を追いかけた。最終的に戸別訪問の件数は1000件を超えた。2021年1月の連邦議事堂襲撃事件を取材した後に帰国し、『「トランプ信者」潜入一年』として上梓した。
私はその日から、ジョンにもらった帽子を被ってボランティア活動に精を出した。この帽子のおかげで、トランプを熱狂的に支持する人たちの声を聞くことができた。
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