日本株を買う今年最後のチャンスがやって来た 日経平均株価の「戻りのメド」はいくらなのか

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一方で、多くの海外投資家は、「株主還元を強化するなら日本株を買える」と異口同音に答える。株主還元策の代表的な1つに「自己株(自社株)買い」がある。

以下の2つの理由から、企業の自己株買いには、海外投資家の期待が高い。

①市場に出回る株式数が減るので、それだけで株価が上がる
②ROE(自己資本利益率、1株当たり利益÷自己資本で算出)が上昇する。ROEは、株主資本利益率ともいわれ、その株に投資してどれだけ利益を効率良く得られるかを表す

日本企業の自己株買いは過去最高、中長期は「強気」で

日本企業の「自己株買い」の金額の推移を年次ベースで比較すると、今年は金額ベースで10兆円を超えており(9月末)、すでに去年の年額を超えている。

だが、自己株買いを日米欧でグローバル比較してみると、日本の「自己株買い」は増加しているが、「自己資本」の対比では、アメリカ(8.6%)と比べ日本(1.3%)はインパクトが小さすぎるのだ。アメリカの6~7分の1程度だ。「(自己株買い+配当金)÷経常利益」という総還元性向に近い考え方で比較しても日本(34.2%)はアメリカ(63.9%)と半分程度だ。自己株買いが増えてはいるものの、欧米に比べると、まだまだ物足りない。

私は、自己株買いが少ないから、やみくもに増やせといっているわけではない。上場企業は競争力のある事業に設備投資をして稼ぐ、あるいは将来の収益柱を育成するため研究開発費を増やす、M&Aで事業ポートフォリオを強化する、優秀な人材を確保して持続的に稼ぐために人件費を増加させるなど、持続的に利益成長するためにお金を使ってほしい。

「インベスト・イン・キシダ」の評価はこれからだ。だが「リスキリング(社員が市場のニーズに対応できるよう新たなスキルを身につけること)」によって、社員の持続的な賃上げ(給与アップ)や、スキルの高い人材に成長産業への円滑な労働移動(前向きな転職)を促すといった政策などにより、社会全体の生産性の向上につなげるポジティブな流れが出てくる可能性があると期待したい。

それでも、足元では着実に自己株買いは増加している。まだまだ、日本株には改善の余地があるはずだ。方向性(流れ)はいいので、海外投資家がこの流れに気づけば、その前に日本株を買うという戦略は選択肢として「アリ」だ。日本株には、中長期では強気でじっくり仕込みたいものだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

糸島 孝俊 株式ストラテジスト

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いとしま たかとし / Takatoshi Itoshima

ピクテ・ジャパン株式会社投資戦略部ストラテジスト。シンクタンクのアナリストを経て、日系大手運用会社やヘッジファンドなどのファンドマネジャーに従事。運用経験通算21年。最優秀ファンド賞3回・優秀ファンド賞2回の受賞歴を誇る日本株ファンドの運用経験を持つ。ピクテではストラテジストとして国内中心に主要国株式までカバー。日経CNBC「昼エクスプレス」は隔週月曜日、テレビ東京「Newsモーニングサテライト」、BSテレビ東京「NIKKEI NEWS NEXT」、ストックボイス、ラジオNIKKEIなどにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、国際公認投資アナリスト(CIIA)、国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

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