ウクライナから予測できる近未来の「台湾有事」 日本が「戦場」になる日ははたして来るのか?

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2021年10月9日、北京の人民大会堂で辛亥革命110周年の記念式典が行われ、習近平国家主席がスピーチしました。

「台湾問題は純粋な中国の内政問題であり、外部からのいかなる干渉も許さない」

「(台湾の)統一という歴史的任務は必ず実現させなければならない」

これに対して台湾の外交部(外務省)はすぐに声明を発しました。

「台湾は台湾であり、中華人民共和国の一部ではないと。中華人民共和国はいまだかつて一度も台湾を統治したことがない。ゆえに台湾は現在も、そしてこれからも中国の内政問題にはなりえない。台湾の未来は、台湾の人々だけが決めることができる」(TAIWAN TODAY 『外交部、中国・習近平氏「辛亥革命110周年」談話受けて台湾の立場を表明』)

そもそも今回のウクライナ侵攻は、冬季北京五輪(2022年2月4~20日)が終わり、パラリンピック(3月4〜13日)が始まる直前というタイミングで始まりました。プーチンは、五輪開会式への出席という名目で訪中しており、習近平と会談しています。中露は上海協力機構の加盟国として軍事協力関係にあり、秒読み段階に入っていたウクライナ侵攻について、プーチンが習近平に何も語らなかったとは考えられません。西側諸国の反発も含めて、事前に意見交換をしていたはずです。

プーチンが当初の目論見通り、短期決戦でウクライナを屈服させていたら、それは習近平の台湾侵攻計画に青信号を灯すことになったでしょう。しかしそうはならなかったのです。

広大な国土に比して希薄な人口と、石油・ガス・農産物など豊富な自前資源を持ち、外資を規制してきたロシアに対しては、西側の経済制裁の効果は限定的です。しかし常に過剰人口を抱え、近年はエネルギーも食料も輸入に頼り、外国人投資家に株価を支えられてきた中国は、経済制裁を受ければ直ちに社会不安に直結するでしょう。中国共産党幹部もそのことは百も承知であり、だからロシアのような冒険はできない。ましてロシアが戦争の泥沼化で苦戦しているとなれば、台湾侵攻に二の足を踏むのは当然です。

台湾は、ウクライナ以上に独りぼっち!?

その一方で、アメリカのバイデン政権が口を極めてロシアを批判し、ウクライナに武器は送りながら、参戦することはなく、NATO軍も高みの見物を決め込んでいることは、中国共産党政権を勇気づけることになっています。アメリカの不介入は、ウクライナがNATO加盟国ではなく、参戦義務がないという理由です。

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