大手食品スーパーが「昭和な八百屋」開業の深い訳 オオゼキが地域の商店街で新業態を開発のなぜ
大関屋青果店が出店したのは、甲州街道の下を走る京王新線幡ヶ谷駅から真北に延びる六号通り商店街。250メートルほどの細い路地の両側を小さなお店が立ち並ぶ。シャッターを下ろしたままの店舗はほとんどなく、いまも元気な商店街だ。
「出店の意図は、原点に戻って1人ひとりのお客様の顔を見て売りたい。これに尽きます。日頃のオオゼキの広い売り場では、商品のよさを私たちが直接説明しきれず、お客様をご納得させきれない。この課題認識が出発点です。
スーパーという業態である以上、お客様全員にお声がけするのは無理です。一方、八百屋業態であれば、品種の違いや産地の違いといった能書きを直接お客様に伝えられます。本当はオオゼキでも手売りをしたいんですよ。それは無理だからこのお店を作ったんです」
確かに店頭でいくらPOPを工夫しても、青果1つひとつのよさや魅力は伝えきれない。スーパーでは、店員に商品について尋ねる客もまれだ。何でもネット通販で買えるようになったからこそ、逆に対面の声かけで売る価値は高まっているのかもしれない。
不便なように見えて実は便利?
では、狭さゆえにオオゼキの魅力「圧倒的な品ぞろえ」を実現できない点についてはどうか。大関屋青果店ならではの提供価値は、いったいどこにあるのだろうか。
「オオゼキでは、各店舗の仕入れ責任者の権限で個店ごとに商品を仕入れています。そしてお客様のご要望に1つひとつ応え続けてきたら、今の品数になってしまった。したがって店舗ごとに並んでいる商品も値段も違うんです。ご覧のとおりこの店ではオオゼキと同じような品ぞろえはできません。その代わりに、狭いからこそお客様に選ばせないというサービスが可能になりました」(伊藤さん)
お客様に選ぶ楽しみを提供するのがスーパー「オオゼキ」で、厳選した品ぞろえでお客様を悩ませないのが大関屋青果店だというわけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら