大手食品スーパーが「昭和な八百屋」開業の深い訳 オオゼキが地域の商店街で新業態を開発のなぜ
「品数が少ないぶん、いつ頃、何を仕入れる予定ですともお伝えできます。さらに『昨日買ったのはマズかった』って言われてしまったら、売った本人もモノがわかりますし、お詫びと反省、今後の対応策を一気に片付けることもできます」
確かにこれほどスピーディーなご指摘対応と業務改善はない。お客様相談室経由の電話やメールへの対応ではこうはいかない。
「商圏が狭いぶん、ほとんどのお客様の顔や家族構成がわかるのも強みでしょう。お客様には、ちょっと買いでいいので毎日来てほしいんです。いい品物を安くたくさん買ったって、家ですぐに食べずに保管していたら、味が落ちてしまう。だから、買いすぎに見えるお客様には、わざわざ少しにしたらと声をかけています。この先の値段について明確にお伝えできるのも小さなお店ならではですから」
新業態の大関屋青果店。想定外の出来事がいくつも起きたのではないかと思い、伊藤さんに尋ねてみた。
「それが何も起きていないんです。あるとしたら、広告をいっさい出していないにもかかわらず、これまでのところ想定の倍のお客様がいらっしゃってくれていることぐらい。ここの商店街は土日はほとんどが閉店しているんですけど、それでもうちにはお越しいただけています。今年の1月に2週間、阿佐ヶ谷で実験店を出して対策を練ってきた甲斐がありました」
個人客の評判は上々のようだ。業務用に使う青果を求める飲食店の反応はどうなのだろう。
「喜んでいただけていますよ。『仕入れにいかなくてすむようになった』とか『ロスがなくなったとか』。1日に何度も買いに来てくださる飲食店さんもできました。
いまさら八百屋が開店するなんて、普通じゃありえない話じゃないですか。コンビニさえあれば用が足りるという時代ですし。でも一方で、都心の住宅街の小さな店だからこその親切さや丁寧さも求められているはず。大関屋青果店を、都心にありがちな人とのつながりの希薄さを補う場にしたい」
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