衰退か発展か、開業150年の節目「岐路に立つ鉄道」 日本の近代化を支えた鉄路はどこに向かうのか
明治初期、日本に初めての鉄道が開業してから今年で150年。全国に張り巡らされた路線網は国の近代化と経済発展を長らく支えてきた。だが、盤石だった都市部の通勤輸送や新幹線はコロナ禍で低迷。少子高齢化の進展や道路交通の発達で地方路線の苦境はますます深刻化、在来線に代わって都市間輸送の主力となった新幹線の延伸もさまざまな課題を抱える。日本の鉄道は今、大きな岐路に立たされている。
地域に愛される「鉄道」
「鉄道の日」を約2週間後に控えた10月1日。福島県のJR只見駅は大勢の地域住民らでごった返し、「お祝いムード」に沸いていた。2011年の豪雨で被災し、不通が続いていたJR只見線・会津川口─只見間27.6kmが復旧し、この日11年ぶりに会津若松─小出間の全線で運転を再開したからだ。
当日、新潟県の小出からやってきた上り会津若松行き始発列車は、予定どおり7時すぎに只見を出発。一方、会津若松6時08分発の小出行き1番列車は途中で車両が故障し、運休となってしまった。乗客は復旧区間を代行バスで通過し、続く9時05分発の運行再開記念列車も2時間以上遅れての運転となった。
再開初日から混乱に見舞われたものの、駅に集まった人々の表情は喜びにあふれていた。その笑顔は、たとえ利用者数の極めて少ない赤字路線であっても、鉄道が地域に根差した特別な存在であることを示していた。
これほどまでに日本人の生活に深く根差した「鉄道」。その歴史は今から150年前、明治初期の1872年、新橋─横浜間の開業に始まった。次いで1874年には大阪─神戸間が開業、しだいに路線は各地へと延びていった。戦火による荒廃を経て1964年に開業した東海道新幹線は、世界の高速鉄道時代を切り開いた。
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