衰退か発展か、開業150年の節目「岐路に立つ鉄道」 日本の近代化を支えた鉄路はどこに向かうのか

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2024年度に上下分離化を実施するのが、滋賀県の近江鉄道だ。琵琶湖の東岸に広がる湖東平野に計59.5kmの路線網を展開する。同鉄道は1994年以来営業赤字が続き、2016年には県や沿線自治体に対して経営努力による維持は困難と表明。自治体や鉄道会社などによる協議の結果、上下分離方式での存続を決めた。

近江鉄道
滋賀県の近江鉄道。2024年に上下分離化される(記者撮影)

その滋賀県で、今後の地方路線維持のあり方に一石を投じるであろう議論が進んでいる。公共交通を支える財源を県税として確保しようという「交通税」(地域公共交通を支えるための税制)の導入検討だ。公共交通の維持を目的とした新たな税制が実現すれば、日本で初の事例となる。同県の三日月大造知事は「これから人口減少が進んでいく中、利用者が支払う運賃で経営をやり繰りするモデルと、それを補助金で下支えするという形では、持続可能とはいえないのではないか」と指摘する。

開業150年「鉄道の位置付け」は

ローカル線維持の一形態としては、駅など鉄道のシンボル的価値を生かしたBRT(バス高速輸送システム)が注目を集めている。例えば東日本大震災で被災したJR気仙沼線・大船渡線が代表例で、豪雨災害で不通となったJR九州日田彦山線の一部区間も2023年夏にBRTとして再開予定だ。

一方、地域がコストを負担してでも鉄道の存続を選んだ例はある。冒頭で紹介したJR只見線だ。一時は廃止議論も浮上したが、復旧費用の大半を県と沿線自治体が負担することで運行再開を決断した。同区間の1日1km当たり平均利用者は49人で、鉄道として維持するには非常に厳しい数字だが、それでも地域は鉄道を選んだ。

今後もしばらくは新幹線の延伸開業が続き、都市部では新路線の建設計画も複数ある。その一方で、地方では鉄道の存在そのものが消滅の危機に瀕している。鉄道開業から150年。鉄道会社任せでなく、国内の交通機関として鉄道をどう位置づけていくのか、本格的に問われる時代が到来している。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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