衰退か発展か、開業150年の節目「岐路に立つ鉄道」 日本の近代化を支えた鉄路はどこに向かうのか

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ただ、9月23日に開業した最新の新幹線である西九州新幹線は、ほかの新幹線といっさいつながっていない異例の「離れ小島」で開業した。

もともとは線路幅の違う在来線と新幹線を直通できる「フリーゲージトレイン(FGT)」により、博多まで直通する計画だった西九州新幹線。佐賀県の武雄温泉―新鳥栖間の整備方式は未定だ。国などはフル規格での建設を求めているが、所要時間短縮効果が薄く、フル規格新幹線の建設費を負担するメリットがない佐賀県は、同区間について在来線の活用を前提として新幹線整備に合意したというスタンスだからだ。

西九州新幹線かもめ
9月23日に開業した西九州新幹線。佐賀県内の武雄温泉―新鳥栖間の整備方式は未定だ(撮影:尾形文繁)

佐賀県の山口祥義知事は新幹線開業日の9月23日、肥前鹿島駅前で開催されたイベントの会場での取材に「(新幹線開業が悲願の)長崎県のことも考えつつ、佐賀県内は在来線経由というのがぎりぎりの判断だったと思う。それを後から国ができませんと言って佐賀県に負担を強いるのは、筋が違うんじゃないか」と訴えた。国と県の協議は今後も続く見込みだが、着地点は見えない。

在来線をどう維持するか

在来線、とくに地方ローカル線も人口減少や少子高齢化の進展に加え、コロナ禍によって「ドル箱」だった都市部の通勤通学輸送や新幹線・特急の需要が減退、さらに災害による不通も多発し、黒字路線の収益で赤字の地方路線を支えるという従来型の鉄道経営にいよいよ限界が見えてきた。

運賃値上げや駅の無人化、運行本数の削減──。地方路線に限らず鉄道の運営が厳しさを増す中、鉄道会社はさまざまな方法でコスト削減と収益の維持を図ろうとしている。一方で、これらの「自助努力」に任せるだけでは利便性の低下や廃線にもつながりかねない。鉄道会社だけに頼らず、地域が関与して支える仕組みが広がりつつある。

その一例は「上下分離方式」だ。沿線自治体など公的機関が線路や駅など「下」に当たるインフラ部分を保有し、鉄道会社は列車の運行に専念する方式だ。鉄道側には施設の維持管理費が必要ないため、経営上の負担が減る。

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