自然の力を借りて子どもを育てる、北欧発祥「森のようちえん」の本当の価値 非認知能力を育むと再認識されている自然体験

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
森のわらべ代表の浅井智子さん(右)と同行してくれた子どもの庭代表の園田智子(左)さん

そんな中で、少数派かもしれないけれど、森のようちえんが地域で根を張りつつあることは希望です。しかも、その存在が地域を活性化させる役割も担う可能性もあるのです。

今回の取材に同行してくれた園田智子さんは、自身の子育てで森のわらべに出合い、感銘を受けたことから、研修を経て地元で「森のようちえん自然育児 子どもの庭」を開所しました。空き家になった古民家を借り受け、放置されて荒れる里山を保全する活動をしている団体と協力しています。里山に子どもたちと入ることで、地域のつながりができ、地域を守る役割も担っていけると話してくれました。もしそこで、母親たちが就労できたら、子育てと仕事を両立させながら地域とのつながりも生まれる。地元を活性化させるエコシステムが循環しそうです。

実際、この日も手伝いに入っていた森のわらべOGで、今は小学生になる子どもの母親は、森のようちえんでの時間を振り返って、「親同士がつながり合って一緒に子育てができたし、私自身も子育てを楽しめた。その時間が豊かで楽しかったから、子どもが卒園しても手伝いに来ている」と話してくれました。

そこで頭に浮かんだのが、デンマークの森のようちえんで聞いた園長先生の「よい社会をつくるには、よい子ども時代が必要です」という言葉です。よい子ども時代を過ごした子どもたちは、その時間をくれた社会に恩返しをするようになるということです。

私はこの言葉に感銘を受けて、よい子ども時代をつくるために、大人は何をすればいいかを考えてきましたが、この日新たな気づきがありました。

それは、子どもがよい時間を過ごすには、大人がよい時間を過ごすことが大切だということです。自然の中に入ると、子どもだけでなく大人も解放され、感じる力が研ぎ澄まされます。子どもの非認知能力を育むのは、理屈ではない。「子どもの幸せのためには、大人が豊かな時間を過ごすことが大切だ」という当たり前のことを、森のようちえんが気づかせてくれました。

中曽根陽子(なかそね・ようこ)
教育ジャーナリスト/マザークエスト代表
小学館を出産で退職後、女性のネットワークを生かした編集企画会社を発足。「お母さんと子ども達の笑顔のために」をコンセプトに数多くの書籍をプロデュース。その後、数少ないお母さん目線に立つ教育ジャーナリストとして紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。海外の教育視察も行い、偏差値主義の教育からクリエーティブな力を育てる探究型の学びへのシフトを提唱。「子育ては人材育成のプロジェクト」であり、そのキーマンであるお母さんが幸せな子育てを探究する学びの場「マザークエスト」も運営している。著書に『1歩先いく中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』(晶文社)、『子どもがバケる学校を探せ! 中学校選びの新基準』(ダイヤモンド社)、『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの「探究力」の育て方』(青春出版社)などがある

(写真:すべて中曽根氏提供)

関連記事はこちら

執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事