自然の力を借りて子どもを育てる、北欧発祥「森のようちえん」の本当の価値 非認知能力を育むと再認識されている自然体験

✎ 1〜 ✎ 4 ✎ 5 ✎ 6 ✎ 最新
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

救命胴衣と万が一のための防災グッズを積んだ車が1台、現地で待機しますが、子どもたちは、列を作って徒歩で移動します。途中で何かを見つけて寄り道を始める子どもたちの姿も。でも保育者たちは、そこも無視せず、一緒に楽しみながらゆっくり進みます。

子どもたちは小川まで徒歩で移動(左上・左下)。救命胴衣と万が一のための防災グッズを積んだ車が現地で待機する(右)

小川でのシャワークライミング

シャワークライミングの現場は、里山の入り口にある小川です。先に先生が2名水に入り、子どもたちが滑ってくるのを待ち、ほかのスタッフは安全を確認しながら、子どもたちを誘導。年長の子どもたちから次々と水の中に入り、天然の滑り台のようになった岩場を滑っていきます。

年長の子どもたちから次々と水の中に入る

年中・年少の子どもたちは小川横の道からその様子を見ていたり、道端で何かを見つけてそちらに夢中になっていたりと、さまざまです。そんな中、順番が来てもなかなか水に入れない子どもがいました。水の中に片足を踏み入れたり、引っ込めたり、やっぱり無理!と引き返したり。でも、先生はせかさず、無理強いもせず、水の中でじっと待っていました。

年少の子は、お兄さんお姉さんがシャワークライミングをしている間、自分の世界に浸って遊んでいた

それは、結構長い時間のように感じましたが、しばらくすると、その様子を見ていた周りの子どもたちが、口々に「○○ちゃんがんばれ!」と応援し始めました。みんなの声に勇気づけられたその子は、ついに水に入り、先生が広げた腕に向かって、思い切って飛び込んだのです。その時の誇らしげな顔! それは、自分で「やる」と決めて挑戦したからこそ味わえた達成感だったのでしょう。その後は、何回も挑戦していました。

もし、あそこで無理強いしたり、手を貸して滑らせようとしたり、みんなが待っているからと諦めさせるような声をかけていたら……、あの達成感は味わえなかったでしょう。「先生は、あの子が本当はやりたいと思っていること、やればできることをわかっていたから、じっと待っていたのではないか」「子どもの意欲を引き出せるかどうか、それは周りの大人の関わり方次第だ」と実感した瞬間でした。

滑り終えた子どもたちは、自分で着替えをして、自由に遊び始めます。シャワークライミングが終わると、さらに奥の森の入り口付近に移動してお弁当タイムです。この時にも、子どもの力を感じた瞬間がありました。

水にぬれた衣類は体に張り付いて、小さい子は脱ぐのも一苦労です。先に着替えが終わった子どもたちが移動し始める中で、なかなか着替えが進まない子がいました。ちょっと手助けしてあげれば、早く着替えられるのですが、先生は手伝いません。無視するのでもなく、周りで自分たちの用事をしながら、近くにいるだけ。

多分、ここではそれが当たり前なのでしょう。子どもも助けを求めず、自分なりに試行錯誤しながら、時間をかけて着替え終わり、ぬれた服をリュックに詰めて背負うと、先に移動した子どもたちを追いかけていきました。その時の、その子どもの顔は、水の中に思い切って飛び込めた子どもと同じように自信にあふれていました。

なかなか着替えが進まない子がいても、先生は手伝わない。子どもも助けを求めず、自分なりに試行錯誤しながら、時間をかけて着替える

たかが着替えと思うかもしれませんが、ここを待つということは、親はもちろん、保育の現場でもなかなかできないことではないでしょうか。

待っていればできるのに、手を出してしまう……。そこには、待てない大人の事情があるのかもしれないけれど、それによって子どもが自分で考え、選び、経験を通してさまざまなことを学んでいく大切な機会を奪っているのではないか……。今回、森のわらべの子どもたちの様子を見ていて、とくに感じたことでした。

水遊びの後、里山の緑に囲まれ、日の光を浴びながらいただくお弁当タイムは、体を動かした後だけに、子どもたちの食欲も旺盛で、見ているこちらも幸せな気持ちになります。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事