相続税・贈与税の「一体化」改正はどこへ行く? 政府議論が始動、注目集まる贈与税の基礎控除

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縮小

確かに、これは、資産移転の時期の選択に中立的でない。というのも、贈与税における110万円の基礎控除を使う形での課税は、暦年課税と呼ばれ、原則として、これまでにいくら贈与を受けたかや、今後いくら贈与を受けるのかとは関係なく、その年にいくら贈与を受けたかだけを見て課税される。

すると、実際にまとまったお金を贈与する必要があるときに、ニーズに応じて1度に贈与した場合、毎年のように均して贈与するよりも税負担額が増えてしまう。だから、資産移転の時期の選択に中立的でない。

暦年課税の基礎控除廃止・縮小は俎上に載らず

中立的でないから、政府税調はこれを問題視しているとみられ、前述のような噂が出たのだろう。しかし、基礎控除の廃止については、政府税調では俎上に載っていない。

むしろ、贈与税の暦年課税の欠点を補う形で2003年度税制改正において導入された相続時精算課税制度に焦点を当てている。

この制度は、贈与した人(贈与者)が死亡した場合に、これまでに生前贈与された財産と、遺産として受け取る財産(相続財産)を合算して相続税を計算する仕組みで、相続税・贈与税の一体化措置である。相続時精算課税制度は、暦年課税との選択制となっているものの、この制度を選択した場合、それ以降の税負担は資産移転の時期の選択によらず一定となるため、生前贈与に対する抑制は働かないと考えられる。

しかし、相続時精算課税制度は、必ずしも広く利用されているとはいえないのが現状だ。

目下の議論は、この精算課税制度の使い勝手をよくするところに焦点がある。使い勝手が悪いとされる一例を示せば、精算課税制度を選択した以降は、贈与者が死亡するまで毎年、少額であっても贈与があると記録して、税務署にも届け出なければならない。それとは対照的に、暦年課税を選択した場合、年に110万円以下しか贈与を受けなければ、基礎控除があるため、税務署に届け出なくてよい。

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