船橋屋、罵声動画拡散よりもきつい「最大の痛恨」 217年の老舗のブランド以上に傷ついたもの
企業ツイッター界隈には「中の人」という文化がある。広報やツイッター担当者が、同業・別業種を問わず、企業アカウント同士で交流したり、消費者と直接コミュニケーションを取ったりするもので、ここ数年、頭角を現していた企業のひとつが、船橋屋ツイッターだった。フォロワーからは批判が絶えないが、「商品や店員さんには罪ないもんね」「中の人大変だと思いますが、頑張ってください」といった声も見られるのは、普段から消費者とのリレーションシップを作ってきたからに他ならない。
船橋屋の「中の人」は2020年12月、日経クロストレンドの記事で、こう語っていた。
もし渡辺氏も「中の人」と同じ精神を持っていたなら、今回のようなことにはならなかっただろう。
ブランド価値に傷がつき、社員たちの努力が…
インターネット上の情報がなかなか消せないことを、スラングで「デジタルタトゥー」と呼ぶ。渡辺氏もまた、過去のインタビューで社員の8割が辞めたと語っていたことが「パワハラ体質」だったとして、掘り起こされている。インターネットの普及によって、これまでの言動がつまびらかになるのだ。
たとえもし今後、上記のインタビュー記事が非公開になったとしても、「ハイ、終わり」とはならない。SNSには削除前のスクリーンショットが出回り、「証拠隠滅ではないか」と、さらなる悪印象を与える。
4月に発生した知床遊覧船事故も、そうだった。あの時波紋を呼んだのは、経営者本人よりも関わっていた経営コンサルタントの発言だったが、注目された末に、記事は公開停止に。のちに再公開されたが、火に油を注ぐ結果となった。
社長辞任をもって、表向きとしては、幕引きとなった。とはいえ、発覚以前のブランド価値が、そのまま回復するわけではない。残された社員達は、負のレガシーを拭いながら、改めて信頼を積み重ねていかなければならない。
そしてなにより、今回の一件を通じて、世間の船橋屋に対する消費者のイメージが悪化し、記憶を上書きされてしまった。上記のような社員たちのこれまでの努力は水の泡……とまでは言わないまでも、決してプラスの出来事ではなかった。
船橋屋は9月29日、執行役員の佐藤恭子(神山恭子)氏が、後継社長に就任したと発表した。なお、先に挙げた5本のプレスリリースは、4本が会社名義だったが、「無関係な企業と〜」は佐藤氏の名義で出されている。
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