店先も吹っ飛んだ「米最悪級ハリケーン」の恐怖 最悪のシナリオは回避したが家屋倒壊、停電も
午前5時過ぎ、老人ホームから緊急電話がかかって来た。アヴァンテ・アット・オーランドという低地にある低床の施設が浸水し、歩けない人を含む106人の入居者が危険にさらされているというのだ。
熟練した看護・リハビリセンターをうたっているこの施設に、夜明けまでに数十人の救助隊員が到着していた。建物内に侵入した水は約1フィート(30.48㎝)の深さだったが、外の駐車場では3フィートほどもあっただろうか。80代や90代の患者の多くが簡易ベッドに寝かされ運び出された。上陸中のハリケーン「イアン」の強風に煽られ白いシーツは膨らみ、彼らの顔は恐怖と混乱に満ちていた。
しかし、彼らは間もなくバンやバスに乗せられ避難所や病院へと運ばれた。濡れたまま揺られている状態ではあったが無事であった。
割れた硝子と吹き飛ばされた店先
9月28日、フロリダ州中央部の大半を大雨と強風が襲った。痛ましい大惨事から、単なる強風による不便まで、ハリケーンによる被害が明らかになった。南西沿岸部のひどい惨状から、州の北東の端に近いセントオーガスティンの見慣れた冠水まで、被害状況はさまざまだった。
ケープ・コーラル近くのバリケードが張られた島では救助隊が懸命に人々を救出し、フォート・マイヤーズでは破壊されたボートと腐敗した瓦礫の漂流物が、えぐられたビーチに沿って積み重なっている。
北へ1時間のところにあるアルカディアでは、趣のある歴史地区が、割れたガラスと吹き飛ばされた店先の惨状を呈していた。ピース・リバーにかかる橋の東端にあるウエスト・オーク・ストリートの一帯は水に飲み込まれ、デソト郡の保安官代理が29日に渡ろうとするドライバーの列に対して、渡らないようにと呼びかけていた。
「自己責任で」と、次から次へと声をかける。「あなたが動けなくなっても、牽引したり、助け出したりするつもりはありません。わかりましたか?彼の後ろで、小さな4ドア車がエンストしていた。