ウクライナ鉄道CEOが語る「日本人に望むこと」 戦時下の運行体制や戦略を単独インタビュー

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オレクサンドル・カムイシンCEO
イノトランスを訪問したウクライナ鉄道のオレクサンドル・カムイシンCEO(記者撮影)

世界最大の鉄道見本市であるイノトランスには、各国の鉄道会社や鉄道メーカーのトップが一堂に会する。従業員数25万人、線路の総延長2万2300kmという巨大な国営企業、ウクライナ鉄道のオレクサンドル・カムイシンCEO(最高経営責任者)も会場に姿を見せた。大企業のトップに似つかわしくないポロシャツ姿というカジュアルないでたちは、Tシャツ姿でおなじみのゼレンスキー大統領譲りだ。

戦時下におけるウクライナ鉄道が果たす役割はますます高まっている。鉄道は欧州諸国へ避難する人々の交通手段であるほか、医師や医療機器を乗せ戦傷者を救急搬送する医療列車も運行する。各国からの支援物資も鉄道でウクライナの各地に運ばれる。また、これまで海運がメインだった小麦やトウモロコシといった穀物の輸出は、海上封鎖により貨物列車による輸送が重要性を増す。

ウクライナの生命線を守る

まさにウクライナの生命線ともいえる鉄道をロシア軍が見逃すはずはない。2本のレールはつねにロシア軍による攻撃の危機にさらされている。

しかし、破壊された鉄路にはすぐにウクライナ鉄道の作業員が駆けつけ、復旧作業に着手する。作業期間中は迂回ルートを確保することで運行が滞ることはない。通常ならこうした指示は本部の運行指令所から行われるが、ここを攻撃されると鉄道運行が麻痺してしまう。そのため、ロシア軍が位置を把握できないよう、運行指令所の場所はつねに変わる。地方の駅に臨時の運行指令所を設けることもあれば、列車の中から指示を出すこともある。

そんなカムイシンCEOに「日本の読者にウクライナ鉄道の奮闘ぶりを伝えたい」と声をかけると快く了承。インタビューが実現した。

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