ウクライナ鉄道CEOが語る「日本人に望むこと」 戦時下の運行体制や戦略を単独インタビュー

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続いて、現在の鉄道運営における困難ぶりについて聞いてみた。カムイシンCEOの答えは意外なものであった。「まったく困難ではない」。

1カ所にとどまらず国内を移動しながら鉄道運行の指揮を取る。鉄路が破壊されれば速やかに修復、あるいは迂回ルートを考える。これがなぜ難しくないのか。「もちろん、戦争がはじまった当初は大変だった。攻撃を受けている中で新しい運行手法に移行することが簡単であるわけがない。しかし、現在はわれわれの誰もが何をやるべきかを明確にわかっている。安全な運行という鉄道の使命はまったく変わりないのだ」。

とはいえ、復旧作業中に線路付近に落ちた不発弾が爆発するなど、不測の事故は絶えず起きる。「開戦以来これまでに従業員のうち244人が命を落とし、425人が負傷した」とカムイシンCEOは表情を曇らせた。兵士として戦場に赴いた従業員も多数に及ぶという。戦時下の鉄道運行とはこうしたことも含むのだ。

日本に期待したいことは何か

最後に、ウクライナ鉄道が日本に期待したいことは何かを聞いてみた。カムイシンCEOの答えは「2つある。1つ目は“経験”だ。日本は戦後、すばらしい復興を遂げた。そして2011年3月の東日本大震災とそれに伴う福島第一原子力発電所の事故という困難も乗り越えた。戦争や震災という危機から復活したその経験は国家にも鉄道にも役立つものだ。ぜひ共有したい」というものであった。

主要国の政府や鉄道会社はウクライナの鉄道インフラに対する復興支援を表明している。その意味で日本の復興の経験を伝えてほしいということは、復興のための支援をしてほしいということを意味しているのかもしれない。

カムイシンCEOがもう1つ日本人に期待していること。それはこんな発言だった。「私たちの側にいてほしい。私たちを支持してほしい。それだけで大きな励みになる」――。

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大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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