なぜ、母は反対しなかったのか? 僕はあとから聞いてみました。「なんであのとき、反対しなかったの?」と。
すると母はこう言いました。
「だってあんた、高校生だったじゃない。義務教育の期間は終わって、選んで高校生になった、大人だったじゃない。なら、相談には乗るけど、自分で決めたことなら口を挟む権利はないから」
誤解のないように言いますが、母は放任主義的な人ではありませんでした。小学生のときはかなり勉強にもガミガミ言うタイプで、僕が勉強しないので何度も怒られました。
でも、高校に上がってから、ピタッと勉強についても生活についても怒られることはなくなりました。「高校から先は、子どもが自分で決めなきゃならない時期だから」と考えていたのだそうです。
勉強や進路についての放任っぷりは僕も驚くくらいで、こちらが話を振らなければ、勉強についても受験についても、絶対に一言も言われませんでした。模試の成績表が返ってきても「私は地方の短大卒で、見てもわからないから見せなくていい」とまで言う始末でした。
体調管理面では万全のバックアップ
しかし、母が何もしなかったのかというと、まったくそんなことはありません。
「夜食作って」とお願いしたわけですが、そういった食事関連・体調管理関連のことに関しては、全力でバックアップしてくれたのです。
栄養バランスのいいお弁当を作ってくれたり、「食べながら勉強するならサンドイッチにしようか」と食べるときのことを考慮してくれたり、栄養食品を買ってきて「これを飲んで風邪をひかないようにしよう」と言ってくれたり……「勉強と進路以外のバックアップ」をすべてやってくれたと感じています。
そんな母は受験の前、神社に5000円を持ってお祈りに行きました。
それを見て僕が「合格祈願をしてくれたの?」と聞いたら、首を横に振りました。
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