支持率30%を割り込んだ韓国・尹錫悦政権の現実 労働市場改革と福祉政策拡大で浮揚なるか

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一方、既存の年功給中心の賃金体系を改善するために、アメリカのO*NET(Occupational Information Network)を参考に「韓国版職務別賃金情報システム」を構築し、企業に対する賃金コンサルティング支援機能を拡大するとともに、韓国企業の賃金体系の実態を分析し、改善案を提案する計画だ。

O*NETとは、アメリカの職業分類に含まれる900以上の職種について、具体的な能力、必要な知識、向いている興味や価値観などを共通尺度上で数値化したデータを提供しているウェブサイトであり、2003年にアメリカ労働省により構築された。日本政府も2020年3月19日にこれをモデルとして、約500の職業情報を掲載した日本版O-NETをリリースしている。

一方で雇用労働部は、年功給中心の賃金体系は高成長時代には適合するが、現在のような低成長時代や転職が多い時代には望ましくなく、企業の生産性低下と労働者の勤労意欲の低下につながる恐れがあると説明した。しかし、導入以降継続した問題になっている「賃金ピーク制」については、具体的な改善案は提示されなかった。

「賃金ピーク制」とは、雇用または定年延長を企業が保障する代わりに、一定の年齢以降の賃金を引き下げる制度である。民間企業には2000年以降導入され始め、2013年に高齢者雇用促進法により60歳以上の定年を段階的に義務化するよう改正されてから、公共機関と大企業に急速に広がった(改正法は2016年から段階的に施行)。

福祉政策の拡大も目指す

労働者側では、「賃金ピーク制」は年齢を理由に賃金を引き下げるなど、労働者側に不利益を与える制度であると不満の声が多かった。2022年5月26日には、研究機関の退職者が在職中の賃金ピーク制適用によって減少した賃金相当額の支払いを元の勤め先に求めた訴訟の上告審判決が行われ、最高裁は「合理的理由のない賃金ピーク制は無効」であると判決した。

韓国では「賃金ピーク制」は日本から実施された制度だと多くの人が考えているが、日本には「賃金ピーク制」という言葉はない。役職定年制により役職手当が支給されなくなり、従来よりも低い賃金テーブルに移行することにより、賃金が減ることを「賃金ピーク制」だと誤解している可能性が高い。制度に対する正しい理解が必要だ。

2022年8月30日に開かれた国務会議(日本の閣議に相当)では、新設される「親給与(韓国語の直訳は「父母給与」)」を含めた2023年の政府予算案を確定した。国務会議の結果、日本の旧厚生省に当たる保健福祉部(省)の2023年予算は約109兆ウォン(約10.9兆円)で2022年の約97.5兆ウォン(約9.8兆円)より11.8%も増加した。

「親給与」は、尹政権の110大国政課題の1つで、既存の「嬰児手当(1カ月30万ウォン(約3万円))」を拡大し、満0~1歳の子どもを養育する世帯に月35万~70万ウォン(約3.5万~7万円)が支給される(満0歳の子どもを養育する世帯には35万ウォン(約3.5万円)、満1歳の子どもを養育する世帯には70万ウォン(約7万円)を支給)。2024年からは公約通り、満0歳の子どもを養育する世帯には100万ウォン(約10万円)を、満1歳の子どもを養育する世帯には50万ウォン(約5万円)を支給する予定だ。

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