支持率30%を割り込んだ韓国・尹錫悦政権の現実 労働市場改革と福祉政策拡大で浮揚なるか

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「週52時間勤務制」の実施以降、韓国の労働者の年間平均労働時間は2018年の1993時間から2021年に1915時間まで減少した。しかし、制度が急速に実施されたことで副作用も起きた。製造業などの現場では残業ができなくなり、賃金総額が減少する問題が発生した。

労働組合が存在する大企業は賃上げを行うことで、残業時間が減り賃金総額が減少した労働者の賃金をある程度補填する措置を実施したものの、中小企業や零細企業の多くはこのような措置が行えず、その結果、労働者の収入は大きく減少した。  

収入が減少した労働者の多くは既存の生活水準を維持するために、勤務後に運転代行や配達といった副業をせざるをえなくなった。仕事を掛け持ちすることで移動時間や労働時間が増え、その結果、文政権が目指していた「夕方のある暮らし」の実現は難しくなってしまった。

また、「週52時間勤務制」以降、中小企業では賃金減少を理由に転職する労働者が増え、中小企業の労働力不足問題はさらに深刻化した。一部の中小企業では人材の流出を防ぐために賃金を引き上げたが、その結果収益は大幅に減少した。

前政権の「週52時間勤務制」を大幅に見直し

2022年3月の大統領選の際、当時の尹錫悦候補は「無理な労働時間の短縮よりは柔軟な働き方を推進する」との公約を掲げて、文政権の「週52時間勤務制」を大幅修正する考えを示した。そして、当選し就任から1カ月が過ぎた2022年6月23日に、雇用労働部は尹政権の労働市場改革推進の方向性を明らかにした。

まず、労働時間制度では、「週52時間勤務制」で週12時間に制限した残業時間を、現在の週単位から月単位で調整する意向を示した。また、実労働時間を短縮するために年次有給休暇の取得率を高め、在宅勤務を含むテレワークの実施など多様な働き方を提示した。さらに、研究開発分野のみ労働時間の清算期間を3カ月としている選択的勤務時間制(フレックスタイム制)を、その他の職種(清算期間は1カ月)にも拡大することも検討するとした。

選択的勤労時間制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることのできる制度のこと。労働者は仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことができるメリットがある。この制度の実施には、あらかじめ使用者と労働者が書面による合意により、対象労働者の範囲、清算期間(1カ月以内)、清算期間中に労働すべき総労働時間、そしてコアタイム(1日のうちで必ず就業しなければならない時間帯)などを定める必要がある。

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