音楽アルバムはなぜ、金曜日発売になるのか 世界統一発売日めぐり世界中で大論争の末…

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イギリス最大のインディーズレーベル、ベガーズ・グループのマーティン・ミルズ会長は独立系部門の「代弁者」として、今回の決定で恩恵を受けるのは基本的に大手レコード会社だと、小売業者向けの講演で語った。

「大手レーベルが、所属アーティストのファンとの間をつなぐ取り引き先の意見に、耳を傾けないことに愕然としている。協議など茶番だったのかもしれない。市場の実力者が以前から強行しようとしてきた話ではないか」

ムーアはある取材で、協議では「世界統一の発売日にはもちろん賛成だが、曜日の主張は譲れない」という意見もあったと振り返っている。

切羽詰まった状況も

一方で、音楽業界には不安も広がっている。イギリスの業界誌ミュージック・ウィークが匿名の情報として、実際に金曜日が世界共通の発売日になれば、ターゲットが「音楽の販売を完全にやめる」のではないかという憶測を伝えたのだ。

ターゲットは即座にこれを否定した。「ターゲットは、海賊版と戦う音楽業界の取り組みを全面的に支援し、世界発売日にも賛成している。ターゲットの店舗でもサイトでも、音楽の販売をやめる計画はいっさいない」と、広報担当者は強調した。

世界発売日がいつ、どのようなかたちで実施されるか、詳細は明らかになっていない。IFPIによると、導入まで半年かかるという見方もある。

とはいえ、強硬な反対派からも、既成事実として受け入れざるを得ないという声が出ている。「ほかに選択肢があるだろうか」と、ミルズはメールで取材に答えた。

日本での適応は国際的アーティストに限定

発売第1週の売り上げという音楽業界にとって重要な数字に、世界共通の発売日がもたらす影響も懸念されている。たとえば、米国では、1週間の会計は日曜日で締める。そこで、アルバムを火曜日に発売して6日分の数字を計上してきた。

テイラー・スウィフトは昨年11月に、新作アルバム「1989」を1日早めて月曜日に発売。米国で第1週の売り上げが130万枚近くに達し、12年ぶりに記録を更新した。

IFPIは、各国のチャート管理団体と協力して、1週間分の数字を発売第1週の対象にできるように調整すると語っている。米国のビルボードは、詳細が決まるまで数カ月かかるとしている。

ささやかな「地域差」は残りそうだ。IFPIによると、日本で金曜日の「世界発売日」に移行するのは、今のところ国際的なアーティストだけのようだ。

(執筆:BEN SISARIO、翻訳:矢羽野薫)

(C) 2015 New York Times News Service

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