路線や列車名、エリザベス女王と鉄道の深い関係 即位70周年に開業の新線や日立製高速車両にも

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

女王は、例年夏季の滞在先としていたスコットランド東部のバルモラル城(Balmoral Castle)で亡くなった。

もしロンドンもしくはその近郊以外で女王が亡くなった場合は、特別葬送列車で棺(ひつぎ)を運ぶといった話がまことしやかに伝えられてきた。これは「女王が亡くなった場合」を想定して事前に策定されていたという手順「ロンドン橋計画」に盛り込まれていたとされる。

女王の棺を載せた霊柩車が通るルートは、さまざまな場所で無数の市民で溢れている。ロンドンに先立って「葬送パレード」が行われたエディンバラ市内では、文字通り「立錐の余地なし」という数の人々が沿道で女王を見送った。

もし女王の棺が列車で移送されることになれば、スコットランドからロンドンにかけての鉄道沿線は弔意を示す数百万人の人々で溢れるかも――との予想もあった。しかし棺は13日午後、スコットランドの首都エディンバラから英空軍機でロンドン西部の軍用空港へと運ばれた。つまり、列車での”移送案“は幻に終わったことになる。

女王逝去、バッキンガム宮殿
バッキンガム宮殿の前に集まった弔意を示す市民らの行列(筆者提供)

鉄道ストも一時「休戦」に

8日に女王が逝去したのち、駅やバス停の広告は一斉に女王の追悼写真に切り替えられた。地下鉄駅で最も圧巻だったのは、1日当たりの乗降者数でトップクラスを誇るロンドン東部のカナリーワーフ駅での掲示だろう。普段なら企業広告を表示している巨大ディスプレイに女王追悼の画像が掲げられ、駅を利用する金融マンたちの注目を集めていた。

目下ロンドンでは、女王を弔う人々はバッキンガム宮殿前に向かったり、あるいは棺(ひつぎ)が公開されるウエストミンスターに向かったりと、普段とはまったく異なる人の流れが生じている。「棺を一目見るための行列」への入り口は、棺が置かれるウェストミンスターホールから6km以上も離れたサザークパークに設けられることになった。徒歩で約1時間半ほどかかる距離に延びる行列で順番を待つ所要時間は「棺までおおよそ30時間」という。

こうした状況について、ロンドン交通局のほか、地方とロンドンとを結ぶ鉄道オペレーター各社も「人出がまったく読めない」と頭を抱えつつも、「弔問には長時間の行列を覚悟で」と市民に促す事態となっている。

「鉄道最前線」の記事はツイッターでも配信中!最新情報から最近の話題に関連した記事まで紹介します。フォローはこちらから

一方、交通関連では思わぬ動きも広がっている。イギリスでは今年6月以来、幾度となく鉄道労働者によるストライキが決行された(2022年8月11日付記事「いつまで続く?英国『30年ぶり』の大規模鉄道スト」参照)。9月中も4~5回のスト実施が予定されていたものの、女王の急逝で労使間の抗争はいったん休戦が決まった。

国葬は9月19日に実施される。70年にわたって国家元首を務めた女王の葬儀が大過なく終わることを望みたい。

この記事の画像を見る(10枚)
さかい もとみ 在英ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事