日本が「円安地獄」にハマって抜け出せない真因 日本と欧米でインフレ要因は大きく異なる

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コストプッシュ型インフレへの対処は複雑である。例えば、ある日突然、重要な原材料価格が10%上昇したが、年々上昇するわけではないとする。その場合、インフレは自然に元に戻る。当初、アメリカの中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)とECBはそう踏んでいたし、日本銀行はまだそうだと考えている。

しかし、コストプッシュの圧力がインフレ率を毎年上昇させ続けるなら、人々の行動は変化する可能性がある。労働者は賃金の引き上げを要求し、企業はコスト上昇分を顧客に転嫁することに成功するかもしれない。だが今のところ、こうしたスパイラルが起こる兆候はほとんどない。アメリカやヨーロッパで今後5年間に予想されるインフレ率が急上昇しているわけでもない。

円安はメリットより代償の方が大きい?

黒田総裁は、日本のインフレは一過性のコストプッシュ型であると主張しており、金利を上げる必要はないばかりか、金利を上げてしまうとGDPの成長も、需要主導の健全なインフレ率2.0%を達成しようとする日銀の努力も損なわれることになるとしている。

悩ましいのは、他国が金利を上げるなか、結果として日本の金利と他国の金利の差が大きくなることだ。そのため、投資家は日本から欧米に資金をシフトし、円は大きく下落する。

このジレンマは、黒田総裁の主張とは逆に、多くのアナリストが円安はメリットよりも代償が大きいと考えていることから生じている。最も基本的なことは、円安は食料品やエネルギーなどの輸入に依存する消費財や、企業が必要とするさまざまな原材料の価格を上昇させるということである。

結果、消費者や内需系企業は、輸入品以外の製品、すなわち、国産製品に回す資金が減ることになる。輸入品にさらなる資金を使うことは、日本の消費者や中小企業から外国の生産者に所得が移転することを意味する。輸出と海外資産でより多くの利益を得ている国内の多国籍企業にも所得は移転する。

必要な輸入品に対する円の購買力(価格調整済み)は、1971年以来最も低くなっている。これは、新型コロナの影響や消費税増税と並んで、個人消費が長年低迷し、2013年当時より4%減少している理由の1つである。

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