「送迎バス園児死亡」どんな法的責任が問われるか 去年同様の事件も、民事責任は重くなる傾向

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さて、法的な責任を考える場合、刑事責任と民事責任に分けて考える必要があります。認定こども園は認定こども園法に基づいて設置されていますが、公立も私立もあり得ます。報道から私立だとして、以下刑事責任を中心に回答します。

――どのような刑事責任が問われることになるのでしょうか。

業務上過失致死罪が考えられます。

車内に置き去りにされる事件では、この他に保護責任者遺棄致死罪も考えられますが、今回のケースは故意によるものではないと思われますので、保護責任者遺棄致死罪ではなく業務上過失致死罪が適用されると思われます。

――複数の園関係者によるミスが重なったとのことですが、このような場合に誰が刑事責任を問われるのでしょうか。

園内で業務上過失致死が問題になる場合、園長と実際担当していた職員(保育士など)が責任を問う対象となることが多いです。たとえば、2017年に埼玉県内の保育園で起きたプールでの死亡事故でも、園長と保育士が有罪となっています。

その他、管理権限の分配のされ方によっては、管理職的地位の人も対象となる場合があります。

――今後どのような捜査がおこなわれると考えられますか。

過失犯の捜査は多岐にわたり、園日誌や事故簿といった園内部の資料、勤務割表や職務分担表といった職員関係の資料、児童名簿や連絡帳などの児童関係の資料など園備え付けの多くの書類が捜査の対象になると思われます。

一般に家宅捜索と言われているもので園を捜索し、必要な書類を押収するといった流れになると思われます。園長の逮捕など、身柄の拘束までは通常至らないことが多いです。

同種事件が最近起きていたことは「量刑に影響する可能性ある」

――2021年7月に発生した福岡県での同様の事件については、2022年3月に元園長と降車補助を担当していた保育士が在宅起訴されています。

重大な死亡事故はおおむね起訴されるので、今回のケースについても業務上過失致死で起訴される可能性が高いと思います。

起訴もされていない段階で判決の見通しまで推測するのは難しいですが、業務上過失致死のみでの初犯というケースの場合、実刑になることは少ないと思われます。

ただ、過失の程度の判断においては、同種事件が最近起きていたこと、厚労省が事務連絡を出していることが影響すると思われます。

2021年8月25日付事務連絡「保育所、幼稚園、認定こども園及び特別支援学校幼稚部における安全管理の徹底について」では、以下(1)~(4)の内容が求められています。

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