「米国株が不調なら日本株も一緒に下落」は本当か 「日本株が優位の時代」が来てもおかしくない

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さらに4~6月期法人企業統計では、全産業の経常利益は前年同期比17.6%の増加だった。設備投資額も同4.6%増となり、プラスは5四半期連続だった。売上高も同7.2%増となっており、2021年度の企業の内部留保は全産業で前年比6.6%増の516兆4750億円と、10年連続で過去最高だ。

心強いデータはまだまだある。大手百貨店5社が発表した8月の売上高速報値は、前年同月を20~40%程度も上回る大幅な増加だった。筆者がつねに重視するマネタリーベース平均残高についても、8月は前年比0.4%増の659兆7138億円と、引き続き高水準の流動性は供給されている。

「日本株が優位な時代」の再来も

さらにアメリカの戦後の相場をひもとくと、「黄金の1960年代」と言われた上昇相場の仕上げは「ニフティフィフティー」(優良50銘柄)の高騰相場だった。その後の物価高騰に対するFRBの金融政策で、「株式の死」と言われた1970年代の低迷相場があった。

仮に、1960年代の上昇相場を今回の「適温相場」に置き換え、そのピークを飾ったニフティフィフティーを「GAFAM」に置き換えるとどうなるか。これからの物価高騰に対するFRBの金融政策によって出現する相場は、1970年代の「株式の死」に匹敵する低迷相場だと見るアメリカの投資家も少なくないだろう。

だが、1970年代のNY(ニューヨーク)ダウ30種平均はほぼ1000ドルを高値とする長期的なモミ合い相場だったが、この間、日経平均株価は2000円前後から7000円前後へと急騰を演じている。

もちろん、人口が初めて1億人に乗せ、「世界第2位の経済大国」への道をひた走った1970年代と、すべてが黄昏れてきた今の日本を単純に比較することは酷かもしれない。だが、アメリカの相場低迷をそのまま日本株の低迷に結びつけることもなかろう。筆者は次第に日本株の優位性が現れてくると信じている。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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