「米国株が不調なら日本株も一緒に下落」は本当か 「日本株が優位の時代」が来てもおかしくない

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アメリカの実質GDP成長率は前期比年率で、2022年1~3月期に-1.6%、4~6月期は-0.6%と2四半期期連続のマイナス成長だった。

それでも、三井住友DSアセットマネジメントの予想(8月19日時点)では、2022年7~9月期の同+1.5%から2023年10~12月期の同+1.6%まで、途中+0.7%に低下することはあっても、一度もマイナス圏に陥ることなく、かつ、一度も潜在成長率1.8%を上回ることのない「グロースリセッション」状態が続く、とする。

ただ、「グロースリセッション」が到来したとしても、相場材料としての意味合いは、今後の景気への「投資家の期待値」によって大きく違ってくるはずだ。ソフトランディングで早期の回復を期待する投資家にとっては、グロースリセッションはネガティブな材料だろう。だが、本格的リセッションを不安視していた投資家にとっては、ポジティブな材料ととらえることができる。

そもそも、同国で景気の拡大・後退の転換点を判定するのは、民間団体の全米経済研究所(NBER)だ。同研究所は、リセッションについて「経済全体に波及し、数カ月以上続く経済活動の著しい低下」と定義している。

実際にリセッションを判定する場合は、GDP(国内総生産)、実質個人所得、非農業部門雇用者数、実質個人消費支出(PCE)などの指標を参照し、そこに深さ・広がり・期間の3つの基準を考慮する。

期間については、山と山の間隔が5カ月以上、一循環の長さは15カ月となっているが、深さや広がりは、GDP・実質個人所得・非農業部門雇用者数・実質個人消費支出(PCE)などは投資家が株価の材料にしている耳慣れた指標ではあるが、景気の拡大・後退の判定は、今後のNBERの発表を待つしかない。それゆえ、現在のアメリカ市場は不安定にならざるをえない。

日本に資金が流れる可能性は十分ある

しかし、アメリカのグロースリセッションは日本株の下げ要因ではないはずだ。景気を犠牲にしなければ物価高騰が収まらないかもしれないアメリカに対して、日本では成長率を安定的に2%にするまで金融緩和路線を修正することができない。世界の資金がどちらへ流れるのかは明白に思える。

日本のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)も後押しする。7月の鉱工業生産指数速報は前月比1.0%の上昇と、2カ月連続で増加した。また、8月消費動向調査の消費者態度指数は、前月比2.3ポイント上昇し、32.5となった。これも3カ月ぶりに改善した。

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