ついに引退、JR北「キハ281系」は何がすごかった? 全盛期は函館―札幌間を3時間以内で結んだ
キハ281系は定格出力355ps、排気量11ℓの直列6気筒直噴ディーゼルインタークーラーターボエンジンN-DMF11HZを1両あたり2台搭載している。このエンジンはJR四国2000系に搭載した出力330psのコマツSA6D125Hをベースとしてパワーアップを図ったもので、智頭急行HOT7000系のコマツSA6D125H-2と同型である。
液体変速機は高速運転を考慮して、変速1段・直結3段のN-DW15形を新たに搭載。最終減速比は1:2.087で、営業最高速度は気動車で初めて時速130kmを実現した。
なお、キハ281系「スーパー北斗」の導入と同時期にキハ183系「北斗」の一部編成も最高時速130km運転を開始したが、キハ281系が時速130kmで巡行できたのに対し、キハ183系は時速130kmの巡航ができず、時速130kmへの加速→惰行→再加速を繰り返していた。
最高時速130km運転に備えてブレーキも強化しており、機関ブレーキ(エンジンブレーキ)と排気ブレーキを採用。さらに時速130km対応鋳鉄制輪子を採用して最高時速130kmから600m以内に停止させることができる。
北海道では冬期の踏面に付着した氷などを除去して保護するため、ディスクブレーキを使用せず、鋳鉄制輪子を使用した踏面ブレーキを使用することを基本としている(一部例外はある)。そのため、苗穂工場は1990年から時速130km運転を開始した785系「スーパーホワイトアロー」用に時速130km対応鋳鉄制輪子を開発。キハ281系にも採用した。キハ281系「スーパー北斗」は運転開始当時の最速列車は札幌―函館間を2時間59分で結び、表定速度時速106kmは在来線特急列車で歴代2位、気動車特急としては最速だった。
キハ281系が残した功績
JR北海道の特急で初めて時速130kmh運転を実施したのは電車の「スーパーホワイトアロー」で、キハ281系はその2年後である。しかし、北海道では非電化区間の方が圧倒的に多いので気動車特急のスピードアップの方が効果的だった。実際キハ281系「スーパー北斗」の函館―札幌間の所要時間は従来よりも30分短縮した。
キハ281系を皮切りにJR北海道は石勝・根室本線の高速化に着手してキハ283系を投入した。続いて宗谷本線を高速化。車体傾斜装置を装備したキハ261系を投入して、札幌を中心に函館、帯広・釧路、名寄への高速特急網を形成した。
JR北海道は更なるスピードアップを視野に入れて、振り子装置と車体傾斜装置を組み合わせた複合車体傾斜システムやMA(モーターアシスト)ハイブリッドシステム等を搭載した次世代特急車両の開発を2011年にスタートさせ、2014年にキハ285系を試作した。
しかし、2011〜2012年に発生した脱線事故や不祥事を受け、JR北海道は方針を転換。特急の最高時速を120km(キハ283系は時速110km)に減速し、キハ261系は車体傾斜装置の使用を停止。キハ285系の開発も中止された。
現在、キハ281系「北斗」の所要時間は3時間33分となっている。今後は北海道新幹線の開業や地方ローカル線の見直しによって、特急網の変化も予想され、もうキハ281系のような技術的エポックの車両は出てこないかもしれない。定期運用終了を前に、8月下旬よりキハ281-901の塗装と側面のロゴが登場時の「HEAT 281 HOKKAIDO EXPERIMENTAL ADVANCED TRAIN」に復元された。復元ロゴは試験走行時のもので、キハ281系が営業運転開始したときの「HEAT 281 Hokkaido Express Advanced Train」とも異なる貴重なものだ。
また、10月22・23日にラストラン列車「スーパー北斗」の運転が予定されている。列車は8両編成で運転され、札幌側8号車にはキハ281-901を連結する予定となっている。
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