日用品メーカー続々と「脱炭素」に挑む切実な理由 高まる投資家圧力、消費者目線の発信がカギ

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国内でも2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂により、東証プライム上場企業に対してこのTCFDに準拠した気候変動関連などの情報開示が実質義務化された。上場企業にとって、CO₂削減は喫緊の課題となっている。

そうした中、花王のCO₂排出量の内訳を見ると、サプライヤーなどからの原材料調達が3割以上、消費者による使用・廃棄が5割以上を占めている。こうした事情から花王はサプライヤーへの働きかけも強化している。

花王は年に1度、主要な取引先向けの説明会を実施している。2022年度は、CO2排出量に関する詳細なデータを開示するよう取引先に求めた。

6月には、サプライヤーを対象とした取引先向けのガイドラインを改訂し、取引先選定の要件にCO2の「削減目標設定」などを加えた。これを守らなかった場合には「お取引の中止など適切な対応をいたします」と、強気な姿勢を見せている。

製品ごとのCO₂排出量可視化に挑戦

業界2位のユニ・チャームも脱炭素に本腰を入れ始めた。

ユニ・チャームは2022年5月、個別製品の温室効果ガス排出量を可視化するプロジェクトを発表した。脱炭素に関するデータを商品と連携させて、環境意識の高さを消費者にアピールするもくろみだ。花王が踏み切ってこなかった領域であり、業界初の取り組みとなる。

日用品業界では新製品が次々と発売される。そのため、製品ごとにCO₂排出量を計算する回数も他業界と比べておのずと多くなる。

そこで同社は、原材料ごとにサプライヤーがCO₂排出量のデータを直接入力できるプラットフォームを構築する方針だという。データが十分に蓄積されれば、他の日用品メーカーにも公開する予定で、サプライヤーにとってもデータの開示がビジネスチャンスにつながる仕組みだ。

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