アース製薬「3000円殺虫剤」で市場に殴り込む事情 50年ぶりに新成分導入、ただ競合は冷めた目線

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アース製薬が開発した新たな殺虫剤(手前中央)。一般的な殺虫剤の3倍もする価格にもかかわらず、大人気だ。その秘密はどこにあるのか(記者撮影)

「アース製薬が虫ケアの常識を変えます」──。

殺虫剤業界最大手のアース製薬がそう力説するのは、2022年2月に発売した新商品「ゼロデナイト」だ。多くの製品が単価1000円前後の殺虫剤市場で、ゼロデナイトは約3000円と、かなり強気の価格設定。発売から約2カ月で出荷額は計画比3倍超えという盛況ぶりで、6月末時点でも好調に売れているという。

通常商品の3倍もする価格にもかかわらず売れ行きが好調な理由について、アース製薬の担当者は「新しい商品に対する期待感で支持をいただけているのではないか」と顔をほころばせる。

1年にわたり害虫のいない空間を実現

なぜ、そんなに売れているのか。最大の特徴は、1度使えば1年間、害虫のいない空間が続くという「予防期間」の長さだ。

1度プッシュすれば、コバエやムカデなど50種類以上の虫から、部屋の中を1年間守ることができるという。近年は幅広い虫に効果のある「オールパーパス」な商品が人気を博しており、ゼロデナイトはそこに「長期間の予防」という新たな機能を追加したのだ。

コロナ禍では在宅時間が増加し、消費者の意識は“予防”へと向き始めた。そこで虫に直接噴射するタイプではなく、空間に噴射することで殺虫成分を部屋に広げるプッシュ式を採用。アース製薬の辻浩一ブランドマネージャーは、「コロナ禍でプッシュ式が拡大しており、虫を駆除するというより予防する機能が若年層をとらえている」と語る。

全国のスーパーやドラッグストアなどを対象としたインテージの調査によると、殺虫剤の中でもこうした「空間・対物用」のカテゴリは、2020年の販売金額が前年比で2割以上増加。2021年も高水準が続いている。虫に直接噴射する「直接用」と比較すると、直近2年間の成長率は2倍以上となっている。

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