アース製薬「3000円殺虫剤」で市場に殴り込む事情 50年ぶりに新成分導入、ただ競合は冷めた目線

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

1年間に及ぶ予防期間の長さを実現したのは、「テネベナール」という有効成分だ。家庭用の殺虫剤に新しい有効成分が導入されるのは、じつに50年ぶりのことだ。

テネベナールは、殺虫剤製品で主に使用されるピレスロイド系統の成分と比べ、即効性は劣るものの、殺虫効果が長時間にわたり持続する特徴がある。熱や光に強く、常温での揮発性が低いため、薬剤の効き目が部屋に残りやすいわけだ。

アース製薬は、2018年に消費者を対象にしたアンケートを実施。そこで消費者が効果の長期化と予防を求めていることがわかり、ニーズにマッチした新商品の開発をスタートさせる。

ところがこれが簡単ではなかった。というのも既存の薬剤では、2つのニーズを満たす商品ができなかったからだ。

メーカーめぐりの末にたどり着いた薬剤

アース製薬が開発したゼロデナイトは、農薬の研究や販売を手がける三井化学アグロが開発した殺虫剤原体、テネベナールを使用している。さまざまなメーカーをめぐった末にたどり着いたこの薬剤が、ニーズを満たす新製品開発のカギとなった。

新たな成分「テネベナール」を使用したことで、長期間にわたり殺虫効果が持続する(記者撮影)

だが、1つ大きな問題があった。三井化学アグロは、あくまで害虫駆除業者などに向けた業務用の商品にテネベナールを使用していた。そのため一般消費者向けに製造・販売するための研究開発を行い、ようやく商品化にこぎつけた。

【2022年7月11日18時20分追記】初出時の一部表記を上記のように修正いたします。

こうしてアース製薬は、世界で初めてテネベナールを使用した家庭用殺虫剤の開発に成功した。

ただ、既存の商品に機能を追加していくアース製薬の高付加価値化戦略に対して、ライバルの視線は冷ややかだ。

次ページライバル勢が冷ややかに見る理由
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事