アカデミー賞獲った未婚母の「干渉しない子育て」 子育てと仕事の両立に苦しむ母親にアドバイス

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──シンググルマザーで子どもを育てるには、日本よりも海外のほうが適していると思いますか?

吉崎:はい。「未婚の母」は当時も海外ではノーマルなことでした。子どもの父親はパリに住んでいて、週末は私たちの住むロンドンへ来たり、また、私たちがパリに行くこともありましたが、普通に行き来をしていました。

イギリスは女性が子どもを1人で育てられるように、チャイルドマインダーという国に認定された保育士を利用することができますし、ひとり親への金銭的なサポートもあります。

また、近所の2つの家族が私の子どもを家族同様に育ててくれたことも大きかったです。

息子は私が仕事で夜いないときには、その家族の自宅に泊まることもありました。

近所のネットワークを利用して子育てをするという考え方は大切だと思います。息子は、8カ月のときから近所の人たちと一緒に育ちました。今でも誕生日をお祝いし合って家族同様に付き合っています。

子育てと仕事を両立させてきた吉崎さん(撮影:谷岡康則)

──近所の人と助け合って子育てをするうえで大切なことがあると聞きました。

吉崎:仕事の話をいっさいしないことだと思います。例えば私の場合、近所の人たちにとって映画の世界は無縁です。なので、映画の話はせずに、身近な話題をするように心がけました。

自分は映画のプロデューサーをしていましたが、それは私のキャリアであって彼らにはいっさい関係のないこと。信頼関係に傷がつかないようにそのことは心がけました。それがうまくやっていくカギだと思います。

みんなで子どもを育てたほうがいい

──日本では仕事と子育ての両立は難しいと言われています。

吉崎:日本の社会がよくないのかもしれませんが、日本ではキャリアの女性ほど、結婚もしないし、子どもも作らない人が多い。仕事に邁進している人が多い印象です。

それはある意味でもったいない。子どもを育てることで得られることはたくさんあります。おしめを替えることで、気がつくこともある。仕事では得られない深いエモーションを引き出してくれます。

日本では、子育てとの両立で苦しんでいるお母さんは周囲から「仕事を辞めたら」と言われがちです。でも、仕事をしていて1人で育てられないなら、仕事を続けながらみんなで子どもを育てたほうがいい。1人で育てるよりもみんなで育てるほうがいいんです。ほかの子どもたちと一緒なら、子ども同士で一緒に遊んでくれているので、大人もラクできます。

日本には「血は水よりも濃い」という言葉がありますが、そうは思いません。現代社会において、家族はフォーマットが変化しているのではないでしょうか。血のつながりだけがすべてではない。そう考えたほうがうまくいくと思います。

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