大倉山のイタリアン、コロナ禍2年半を凌いだ工夫 早々に2号店閉め、新事業への展開で売り上げ1.5倍

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 5
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
大倉山駅にあるイタリアン「トラットリア ピッツェリア ピレウス」の店内
イートインはまだ戻りきっていない様子だった(筆者撮影)

この制度を利用して、お弁当のキッチンカーでの販売も開始した。キッチンカーはレストラン業とは違うジャンルになる。キッチンカーは主に都内のオフィス街で販売を行っている。コロナが収まるのをただ待つのではなく、違うことを始める努力をしたほうがいいと思ったのだ。そして、ケータリングのサービスを行っている会社とも提携し、弁当の販売も行った。

筆者が店にお邪魔したときはちょうど、ケータリングの弁当をスタッフが準備しているところで、しばらくするとケータリング業者が弁当を回収しに来ていた。このケータリングは大手企業などに届ける形となっており、料金も800〜1000円とリーズナブルな価格帯だ。

このように早めに手を打っていたピレウスであるが、コロナ禍に突入したばかりの2020年4月頃がいちばんつらかったと國安氏は打ち明ける。

「融資も何も受けてなくて補助金もなくて、2号店もまだあったので2店舗分の家賃と人件費を払っていました。本当にキャッシュがきつくて個人の貯蓄から払ったこともありました。2020年の4月、5月あたりで一気に会社の予備費がなくなったので、このままだと正直立ち行かなくなってしまうなというレベルでした。それで急いで融資とか借り入れをおこして売却できるような段取りをして早めに動いたんです」

新機軸を打ち出したことで逆に売り上げ増に

早めに動いたおかげで、現在はコロナ前よりも売り上げが1.5倍も増えたそうだ。これはイートインよりもキッチンカーやケータリングの影響が大きいという。

筆者が店に訪れたのはランチの終わった15時頃。どの席にもまだ食器が残っていて片付けをしている最中だった。見る限り全席が埋まっていた模様だ。ただ、現在第7波が襲っている中、以前は貸し切りを行っていたこともあったが、完全にそれはなくなったという。また、団体客の予約もなくなり、多くて4名での食事だとのことだった。

今回、國安氏の話を聞いて感じたのはとにかく打つ手が早かったことだ。それと、地域密着型で地域の人から愛されていたこと。今はキッチンカーとケータリングのおかげで逆に売り上げが増えたのは、危機に直面したからこその新たな発想や行動を呼び起こす、まさにイノベーションを導いたのだろう。一方で、イートインは完全にコロナ前に戻ることはまだまだ先なのだろうと思い知らされた取材でもあった。

本連載では厳しい行動制限を課されたコロナ禍において飲食店を経営され、現在も運営を続けている経営者の体験談を募集しております。取材の申し込みは以下(https://form.toyokeizai.net/enquete/tko2206c/)よりお願いいたします。
姫野 桂 フリーライター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事