問題はここからだ。ビッグモーターによる自主調査の結果、複数の工場で水増し請求が発覚したとなれば、各工場における社員個人の過失というより、組織的な関与が疑われることになる。であれば、弁護士など第三者の協力も得ながら、詳細な追加の実態調査が当然必要になるはずだ。
ところが現在、一丸となって対応するはずの大手損保3社で、足並みが乱れる状況に陥ってしまっている。
その要因は大きく2つある。1つ目は、ビッグモーター側の姿勢だ。同社は水増し請求について「工場と見積作成部署との連携不足や、作業員のミスなどによるもの」「意図的なものでないことを確認している」などと整理し、兼重宏行社長の指示をはじめ組織的関与はないと主張しているためだ。それゆえ、水増し請求の対象になった車両の持ち主に経緯説明を行っていない。
早期の幕引きを図った損保ジャパン
2つ目は、ビッグモーターが保険代理店として所属する会社(代理申請会社)の損保ジャパンの対応だ。損保ジャパンはビッグモーターの自主調査や独自のヒアリングなどを基に、同社の主張をほぼ鵜呑みにするような形で、組織的関与はないと早々に結論づけてしまっている。
そうした判断を行った理由について、損保ジャパンは東洋経済の取材に対し、「組織的な不正の指示がなかったことを確認できたため」「(事務の)仕組みや作業員などの技術力不足が当該事象の真因であることから、全国的に同様の事象が発生しているとの認識のもと、会社として全社的な再発防止策を速やかに実施していることが確認できたため」と説明している。
だが、関東地域4工場の調査以後、追加の実態調査が行われていない段階で、仕組みや技術力不足などが「真因」と言い切れるのか甚だ疑問だ。
一方で、東京海上と三井住友海上の2社はどうなのか。ビッグモーターの関係者によると、2社は追加調査の必要性をビッグモーター側に訴えているという。ただ、年間の収入保険料が100億円以上にのぼり、大型の保険代理店であるビッグモーターへの忖度もあるのか、追加調査を求める圧力はお世辞にも強いとは言えないようだ。
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