ついに始動?マレー半島―中国間「鉄道貨物輸送」 マレーシア鉄道「ラオス行き」運行で何を狙うか
東南アジアでは、中国が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」により、新たな鉄道網が切り開かれつつある。2021年末には、これまで本格的な鉄道のなかったラオス国内を貫き、中国と直結する「中国ラオス鉄道(LCR)」が全通、中国からタイとの国境まで鉄道がつながった。
「ASEAN(東南アジア諸国連合)が中国に飲み込まれるのでは」という懸念がある中、「せっかく中国とASEANをつなぐ鉄道網が完備されるなら、自国の経済発展につなげよう」と東南アジア側でしたたかに策略を練る動きが出てきた。マレーシアの国営マレー鉄道(KTM)は今年10月から、「アセアンエクスプレス」と名付けたマレーシア・タイ・ラオスをつなぐ3国間貨物輸送を本格開始すると打ち出したのだ。
はたしてASEAN諸国はいかにして「中国製鉄道インフラ」を使って漁夫の利を得ようとしているのだろうか。
3国直通の試運転列車が出発
8月11日午後5時、マレーシアのクアラルンプール駅からラオスのタナレーン駅に向け、10両編成の貨物列車が出発した。3国間輸送の実現に向けた試運転列車だ。
タイ―マレーシア―シンガポール間は、20世紀初頭に開通したメーターゲージ(軌間1000mm)の鉄道があり、いまも物流や旅客輸送の重要なインフラとして使われている。タイ国内はタイ国鉄(SRT)、マレーシア区間は数kmのシンガポール国内区間も含め、KTMが運営している。南端のジョホール・バル―シンガポール間には、世界で最も短い国際列車(「乗車5分、『世界最短の国際列車』はなぜ存在するか」)が走っている。
タイからラオスへは、メコン川にかかる鉄道道路併用橋の「タイ・ラオス第1友好橋」の線路を使って、SRTが2009年からタイのノンカイ駅とラオスのタナレーン駅を結ぶ旅客列車を走らせている。同区間の距離はわずか6.15kmで、乗車時間は10〜15分だ。同線はこれまで、「辺境地を行き交うあまり役に立たない鉄道」くらいにしか見られていなかった。
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