ついに始動?マレー半島―中国間「鉄道貨物輸送」 マレーシア鉄道「ラオス行き」運行で何を狙うか
だが昨年12月、ラオスの首都ビエンチャンと中国国境を結び、中国の鉄道につながる「中国ラオス鉄道(LCR)」が全通すると、タナレーンに乗り入れていたタイからの鉄道が脚光を浴びることになった。タナレーンはビエンチャンにほど近く、接続すれば中国―ASEAN間の鉄道貨物輸送が可能になるためだ。
しかし、タイ側からの鉄道がメーターゲージなのに対してLCRは標準軌(1435mm)と軌間が異なり、列車の直通はできない。そこで、LCRの貨車とタイ側からの貨車を並べて相互に積み替えができる施設「ドライポート」を開くことにした。いったん完成したLCRの線路をさらにドライポートまで延長したところに、中国がASEANへの勢力展開に強い意志を持っていることを感じさせる。
ともあれ、タイ・ラオスの国境地帯という辺境の地だったタナレーンは中国とASEANをつなぐ一大貨物ターミナルに変貌を遂げようとしている。マレーシア政府が考えるラオス行き貨物列車新設の目的は「ラオスとの物流ルートの確保」などではなく、その北側に大きく広がる中国との陸路貿易を念頭に置いているわけだ。
列車名は「アセアンエクスプレス」
KTMはマレーシア・タイ・ラオスの3カ国を結ぶ貨物列車について、「アセアンエクスプレス」の名を打ち出した。試運転列車の発車セレモニーでもこうした愛称を掲げたほか、今後はこの名称を使って、国内外の関係先に向けPRを進めていくという。
試運転列車のクアラルンプール駅出発の際には、マレーシアのウィー・カーション運輸相が自ら発車合図の旗振りを行ったところからしても、今回の貨物列車ルートへの力の入れようが伝わってくる。
「アセアンエクスプレス」はクアラルンプールからマレー半島の西側を通り、国境駅のパダン・ブサール(Padang Besar)でタイに入国。その後、ハートヤイ(Hat Yai)―バンコク―ノンカイ(Nong Khai)を経由してラオスへと向かうルートを運行する。クアラルンプールからラオスの首都・ビエンチャンの郊外にある貨物ターミナルまでの距離は全長2206kmになるという。
本格運行開始後は、タナレーンのドライポートでの貨物積み替えが必要なものの、マレーシアからの貨物を中国全土へ船や航空機を使うことなく運べるようになる。
KTMは今回の試運転の目的について、「マレーシア―ラオス間の貨物列車営業運転を本格的に始めるにあたり、あらゆる項目をテストするため」と説明。「将来、運搬する貨物には振動に敏感な電子機器が含まれる可能性があるため、振動レベルが基準を満たしているかどうかの測定を行う」としている。
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