私鉄首位奪還へ、近鉄「物流子会社化」期待と不安 事業の多角化は進むが、成長戦略を描けるか

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近鉄特急あをによし
2022年に運行を開始した近鉄の観光特急「あをによし」(左)と特急列車(記者撮影)

近鉄が売上高で私鉄トップの座に返り咲く。8月10日、近鉄グループホールディングス(GHD)は2022年度決算が従来予想の売上高8670億円、営業利益300億円から売上高1兆4720億円、営業利益620億円になりそうだと発表した。同社が進めていた物流企業、近鉄エクスプレスへの株式公開買い付け(TOB)が成立し、近鉄エクスプレスが7月から近鉄GHDの連結子会社になったためだ。鉄道を含む運輸業や不動産、流通、レジャーがバランスよく経営を支えてきた近鉄GHDの事業構造が大きく変わり、売上面では物流事業が運輸や不動産を大きく上回る最大勢力となる。また、売上高が6050億円増えることで、大手私鉄の2022年度売上予想では、東急の9370億円、阪急阪神HDの9150億円を超えて最大となる。

近鉄GHDは2015年に近畿日本鉄道が商業変更して発足した純粋持ち株会社。それまでは近畿日本鉄道が本体で営む事業と子会社が営む事業が混在していたが、純粋持ち株会社化により、近鉄GHDの下に鉄道事業に専念する新たな近畿日本鉄道、近鉄不動産、近鉄・都ホテルズ、近鉄百貨店、KNT−CTホールディングスといった会社が併立することになった。

コロナ禍前の2018年度、近鉄GHDの売上高は1兆2369億円。東急(当時は東急電鉄)の1兆1574億円、阪急阪神HDの7914億円を上回り、私鉄トップとして君臨していた。

コロナ禍がホテルや旅行業を直撃

しかし、コロナ禍が近鉄GHDの経営を直撃した。東急や阪急阪神HDはコロナ禍の影響を受けにくい不動産事業の比重が高く、鉄道業界の中では比較的傷が浅かった。しかし、近鉄GHDはホテル、百貨店、旅行といった事業がコロナ禍の影響をもろに受け、直近2021年度の売上高は6915億円と半減してしまった。

一方の東急は2021年度売上高8791億円、阪急阪神HDは同7462億円と踏みとどまった。事業構造の違いによって同じ鉄道業界でも外的要因への耐久力はここまで変わる。

経営立て直しの必要に迫られた近鉄GHDは早期退職制度や採用見直しにより人件費を削減したほか、昨年10月にはホテル近鉄ユニバーサル・シティなど8ホテルの資産を外資系ファンドに売却し、自らは運営受託に特化するという「ノンアセット経営」により資産のスリム化を図った。

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