コロナ禍の存続危機乗り越えた経営者3人の奮闘 売り上げ急減の事態、どう対処してきたのか

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「2019年3月に創業し、当時はオリンピックを控えてインバウンド事業(訪日外国人観光などの事業)も拡大していて、研修はすべて好調でした。大型案件も入り、創業融資も希望額を借りられて、一気にビジネス拡大を狙っていたんです」

しかし、同年12月くらいから、外国人が「コロナ感染」を警戒。対面研修をオンラインに切り替えるも「研修をキャンセルしたい」という連絡が増えていく。

そして2020年、大型案件を含む、見込んでいた売り上げがすべて失注となってしまった。

「涙が出るほどつらい時期でした。『月の売り上げが10万円もない』ということも……。資金はショート寸前で、さらに信頼していたスタッフも退職。しかし鬱になっている暇もなく、とにかく毎朝瞑想して『今日に集中』するよう努めました」

さらに、必要と感じるサービスをどんどんリリースしていく。

「1年で約20個のサービスを出しました。しかし成果が出ないものがほとんど。毎月、自転車操業のような状況でしたが『諦めない』と決めて行動しました」

第2期は必死に働くも、大赤字の一年だった。

新規事業の急成長に助けられる

しかし2021年、売り上げは前年比160%増となった。新規事業の1つ、「日本語教師向けの講座」が急成長したのだ。

「コロナで『(日本語学校の)海外留学生の入学がなくなった』ことで、仕事が減り、日本語教師が一気に排出されてしまった。そこで現在約4万6000人いるといわれる日本語教師がチームとなって強い組織を作れたら、と」

講座では日本語講師の技術力や授業力を上げられるよう、工夫をこなした。結果、現在までに延べ1000人の日本語講師が国内外から参加してくれた。

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2021年6月には「一般社団法人 外国人の子供たちの就学を支援する会」を設立。同年11月にはクラウドファンディングで、外国人の子供たちを義務教育につなげるための資金調達を実施。200名以上から支援され、114%を達成、事業を開始できた。

2020年より突如現れた「コロナ」という荒波に対して、恩恵を受けた業種・業態はあったが、存続の危機にさらされるほど必死にもがいた経営者も多かった。

そんな中で今回の3名の経営者に共通するのは、素早い経営判断とともに、ひねり出した施策を次々に実行したこと、粘り強く立ち向かったことだ。3名の経験から、今後の企業がまた新たな危機を迎えたときに必要となるであろう「精神・行動の両面のヒント」を教授してもらえた、そんなことを感じる取材だった。

斉藤 カオリ 女子ライフジャーナリスト、コラムニスト

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さいとう かおり / Kaori Saito

神奈川県出身、2000年桐朋学園芸術短期大学 演劇専攻卒。合同会社ジョアパルフェ代表。舞台女優、歯科衛生士の仕事を経てフリーライター・エディターに転身し、日経womanなど複数の女性誌や週刊誌、Webで執筆。その中で、働くママ向け媒体制作で出合った500人以上のシングルマザーの苦悩・本音に大きく心を揺さぶられ、現在も独自に取材を継続。『女性の自立と生きがい』を応援する事業も行う。3児の母でもある。
https://saito-kaori.com/

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