脱・橋下?維新「初代表選」を自民党が注視する訳 見えない全国政党への道筋、大阪支配継続も
維新は、「一般国民の視点でみれば、維新を代表するのはいまだに橋下氏」(党幹部)というジレンマにも直面している。橋下氏は2015年5月の住民投票での大阪都構想否決で新代表を辞任し、政界引退を表明したが、その後も後見人的立場で、メディア出演やツイッターなどで維新のあり方について積極的に発信しているからだ。
橋下氏は安倍晋三氏と極めて親しかっただけでなく、松井氏とともに菅義偉前首相とも盟友関係にある。このため、岸田政権発足までは、「与(よ)党と野(や)党の間の『ゆ党』」(立憲民主幹部)と揶揄されながら、自民との太いパイプを武器に、政権寄りの立場で国会運営や政策決定に関与してきた。
岸田政権誕生後は、自民最高幹部の岸田文雄首相(総裁)、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長の3氏の維新嫌いが目立つことで、維新自体も反自民への転換を余儀なくされた。
昨秋の衆院選、今夏の参院選では、自民保守派以上に保守的な主張をするとともに、「大胆な改革」を旗印にして闘ったことで、ロシアのウクライナ軍事侵攻以来保守化が際立つ国民世論を引き付け、維新票の大幅な伸びにつなげたのは間違いない。そうしたことから、党内では「新体制は自民寄りだった橋下・松井主導から脱皮すべきだ」(若手)との声も広がる。
ただ、選挙戦で圧倒的優位とみられているのは現共同代表の馬場氏だけに、「創業時から幹部の馬場氏では、従来の延長線上」との不満もくすぶる。もちろん、当の馬場氏は、党の地盤である大阪偏重とされる党規約の改定による「全国政党化」を掲げているが、大阪の地方議員らから「大阪軽視につながりかねない」との不満も出るなど、馬場氏の立場も複雑だ。
松井氏の馬場氏支持を、ライバルの足立氏は「投票前の支持表明は公正に理念を実現する障害になる」と厳しく批判する。国政進出以来、維新はタッグを組んだ石原慎太郎氏ら「東京組」と決裂するなど分裂劇を繰り返しただけに、「代表選が『大阪対国会議員』の構図になれば、党分裂の芽も膨らむ」(幹部)との懸念もぬぐえない。
自民党内の権力闘争にも影響必至
いずれにしても、次期代表にとっては橋下氏との関係が党運営のカギとなる。もともと橋下氏と激しく対立してきた足立氏は「脱橋下」を強く訴え、馬場、梅村両氏もそれを念頭に党運営に臨む構えだ。
こうした「脱橋下」の流れに橋下氏自身がどう対応するかはなお不透明。「結果的に『馬場対橋下』の闘いが熾烈になれば、党分断にもつながりかねない」(幹部)との不安要素は残る。
岸田首相は先の党内閣人事で、松井氏と盟友の菅氏の取り込みに腐心した。菅氏にとって、橋下・松井両氏との太いパイプが岸田政権下で影響力を行使する武器でもある。馬場氏がそれを断ち切れば、結果的に維新の国政への関与度も急減する。
このため、維新代表選の経過と結果は、自民党内の権力闘争に影響を与える可能性もあり、岸田首相らも今後の展開を注視することになる。
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