「オンライン」が脳に与える知られざるダメージ 情報伝達はできても「感情の共感」は難しい

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「オンライン」とは、コンピュータやスマートフォン(以下スマホ)などが、通信回線を通じて、インターネットに代表されるネットワークやさまざまな端末(別のコンピュータやスマホなど)とつながった状態のことです。

オンラインコミュニケーションでは、「脳がほとんど使われない」「ボーッとしているのと同じ」「脳の活動を抑制する」「心と心がつながらない」「共感を生んで協調関係を築くことができない」……、「対面」と「オンライン」のコミュニケーションを比較する私の研究では、こんな研究結果が次々と出ているのです。オンライン、スマホなどのデジタル機器の使いすぎは、脳の活動を抑制し、自身の能力を下げてしまいます。

また、私の研究では他に「相手の気持ちを思いやりながら行動する」側面にも注目しています。対面でお互い顔を見ながらよいコミュニケーションがとれた場合には、お互いの脳活動が「同期する」という現象が起きます。

ところが、オンラインでは脳が「同期しない」という実験結果が出たのです。

これは、重要なことを示しています。脳活動が同期しないことは、脳にとっては、「オンラインでは、コミュニケーションになっていない」のです。オンラインコミュニケーションでは最低限の情報伝達はできても、「感情を共感する」までには至っていない、ということです。私は、オンラインが拡大すればするほど孤立化が進んでしまう状況が、企業でも教育現場でも目立ってくることを恐れているのです。

教育現場のオンライン化に潜む落とし穴

学校では、ICT(情報通信技術)を積極活用する「GIGA(ギガ)スクール構想」が政府の肝いりで進んでいます。

GIGAは「Global and Innovation Gateway for All」(みんなのための世界的・革新的な入口)の頭文字を並べて、「ディスク容量500ギガバイト」というような単位のギガ(10億)とかけたものです。

文部科学省は、すべての児童生徒に1人1台デジタル端末を配り、高速大容量通信ネットワークを整備して、「多様な子どもたちを誰1人取り残すことのない、公正に個別最適化された教育によって、1人ひとりの資質や能力を伸ばす環境を実現する」ことを目指す、というのです。コロナ休校で公立校のICT化の遅れが露呈したため、文科省は整備を加速しました。

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