アマゾンがルンバを買う意図は思いのほか深い 地雷探知の軍事技術が家の中でどう生かされるか
アメリカのIT大手Amazon(アマゾン)が家庭用ロボット掃除機「ルンバ」を発売するiRobot社を17億ドル(約2300億円)で買収すると発表しました。
このニュースについて日本のあるメディアは「Amazonが家電販売を強化するため」と報道しました。実際にはこの買収、そんなレベルの話ではありません。もっと深い意図があるはずの戦略と考えられます。
GAFA(Google、Apple、Facebook=Meta、Amazon)の一角であるAmazonが競合するGoogleやMeta(旧Facebook)との競合の中で、戦略的にiRobotを買収することにした。その結果、Google、MetaとAmazonのパワーバランスがまた崩れる可能性が出てきたということがこのニュースの本質だと私は捉えています。それを説明しましょう。
AmazonがiRobot買収で先手を打った意味
今回の買収のそもそもの背景はiRobot社の株価が2021年の2月をピークに長期下落傾向にあったことです。以前は36億ドルの企業価値があったIT企業が半額の17億ドルで買える水準になった。株価が下がった理由はこの先、中国の家電メーカーとの競争でルンバの売れ行きが先細りしていくことが予想されていたからです。
その観点でiRobotはいずれアメリカのIT大手のどこかが買収を仕掛けるのは必然だったのだと思います。しかし先手を打ったのがAmazonだったという点が重要です。
Amazonはeコマース、プライム、クラウドの3つの主力事業を持つIT企業です。一方で競合優位性という観点ではロボットとAIによるDX(デジタルトランスフォーメーション)に強みを持っています。Amazonの倉庫では商品を格納した棚がルンバのような走行ロボットで自在に動き回る構造になっていて、それが倉庫の生産性を劇的に向上させています。
Amazonのリアル小売店舗として知られるAmazon Goは無人コンビニと呼ばれる通り、店内には無数の監視カメラやセンサーが設置されていて、AIの判定によってレジを通さなくても誰が何を買ったのかが正確にカウントされる仕組みが確立しています。
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