“迷惑施設"を返上できる?小田急「踏切」に命名権 広告活用とともに「出かける目的地にしたい」

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いすみ鉄道は以前から副駅名の販売や、枕木に名前やメッセージ入りのプレートを設置する「枕木オーナー」制度などを実施している。鉄道施設を生かしたアイデアの募集で、稲木さんが思い浮かんだのはこれらの例だった。「でも、副駅名はすでに(小田急に)あるし、枕木にプレートを付けても駅にホームドアがあると見えない。踏切からだと少しは枕木が見えるけれど、それは危ない」。

そこで気づいたのが、「踏切には固有の名前がない」ことだった。小田急の踏切は駅名と数字を組み合わせた名称だけで、個別の名前はついていない。また、踏切は歩行者や車が列車の通過時に必ず立ち止まるため、愛称入り看板などを取り付ければ目に触れる機会が多く、PRの場になりうる。

小田急の稲木さん
踏切ネーミングライツを発案した足柄電車区の運転士、稲木俊一さん(記者撮影)

ただ、主な目的は命名権販売の収入より、踏切を「地域に極力受け入れられる施設」にすることだと稲木さんは強調する。踏切は交通渋滞や列車と横断者の接触事故など、社会問題の発生源となる”迷惑施設”の側面が強いが、すぐに廃止することは難しい。

一方で、警報機の音が鳴りランプが点滅して列車がやってくるという“鉄道の面白さ”を感じられる場所でもある。実際にコロナ禍以降、「親子連れが列車に手を振ってくれることがかなり増えました」と稲木さん。外出が制限される中、列車が見える踏切や線路際が親子で遊びに行く場所になっていたのだ。

踏切を「出かける場所」に

そこで浮かんだのは、「踏切を『お出かけの目的地』にできないか」という発想だ。ネーミングライツによって注目を集める場所にするとともに、例えば景色のいい場所の踏切に地域外からも来てもらい、そこに地元商店の愛称名や案内などがあれば、訪れた人が周辺を回るきっかけになる。踏切にそういった要素を持たせることで、「好かれるとまではいかなくても、地域に受け入れられる施設になるのではと考えました」と稲木さんは語る。

また、命名権での収益を踏切の安全設備維持などに充てることで、スポンサーには社会課題への貢献をPRできるメリットも生まれる。踏切に対する地域住民らの関心が高まれば、万が一のトラブルの際に非常ボタンを押してもらえるなど、安全性の向上も期待できる。

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