日本で「モーダルシフト」がなかなか進まない背景 声掛けだけで一部でしか実施されていない現状

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仮に自動車の動力がすべて電気に取って代わられたとして、温暖化物質の大幅な削減が実現できるとしても、なお、個別に利用する交通機関は集合的に利用する交通機関に比べて都市内の有限な土地の利用を非効率化することになる。1台のバスに多くの人が乗れば、1人当たりの専有面積は小さくて済む。

そもそも1963年のブキャナン報告では、モータリゼーションの進行、自家用車の増加を社会の発展としてとらえて肯定的に扱っているものの、際限なく自動車が増加することによる道路や駐車場の面積の増加は否定的にとらえている。

鉄道の場合、単位輸送力が大きい分、都市の土地の専有面積は、輸送力に比べて相対的に小さい。また、交通事故という点でも、数の多い自家用車の事故の実数は大きく、死傷者の数も膨大である。この点はバスも同様であるが、高架線や地下線として立体化した鉄道は、自動車や歩行者との衝突の可能性がなく、死傷者の数も絶対的に少ない。

ただ、ホームからの転落事故など、別の事故の問題はある。しかし、横断歩道に比べて鉄道のホームの数は限られており、対策を講じるにも、負担できないほどの大きな金額が必要になるわけではない。現に、大都市でホームドアの設置が急速に進められている。

モーダルシフトの効果が上がらないワケ

CO2の排出量のうち18.6%を運輸部門が占めている(2019年度/国土交通省ホームページより)。貨物1トンキロ当たりのCO2排出量は、自動車が225グラムであるのに対して、鉄道は18グラムである。トラックで運んでいる貨物を鉄道に移すだけでも大きくCO2の排出量を減らすことができる。

しかし、国がより環境負荷の小さい鉄道や内航海運へ貨物をシフトさせる「モーダルシフト」政策を推進しているものの、なかなか効果を上げられないでいる。国土交通白書でも、成果をアピールできないモーダルシフトに関する記述が減ってしまった。

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