日本で「モーダルシフト」がなかなか進まない背景 声掛けだけで一部でしか実施されていない現状

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日本の鉄道の「モーダルシフト」が進んでいない理由とは(写真:KA-HIRO/PIXTA)
世界的に脱炭素に向けた動きは、自動車のような個別系の交通機関より、公共交通機関である鉄道の追い風になるとみられてきたが、肝心な「モーダルシフト」(トラックによる輸送を鉄道や船舶などの公共交通機関に振り替える)は進みが鈍い。本稿では、佐藤信之氏の近著『鉄道会社はどう生き残るか』より、日本でモーダルシフトが進んでいない理由を分析する。

公共交通機関の優位性

環境問題も鉄道会社にとって重要な政策課題である。1970年代には、急速な工業化により河川に汚水が流され、自動車の増加により大気の汚染がひどくなった。21世紀になると、地球環境が深刻な問題となった。地球温暖化が進み、異常気象が増え、巨大台風による洪水、自然災害による道路の遮断、鉄道の寸断が増えていった。

国際的な地球温暖化防止の枠組みが作られ、CO2をはじめとした温暖化物質の削減のために、地球環境への負荷の大きい交通部門での取り組みが求められている。ガソリンエンジンやディーゼルエンジンは、温暖化物質を発生させると同時に、排出ガスによる大気汚染、交通事故による人的被害も発生させている。また、狭い道路を高速で走る自動車の存在自体が、さまざまな社会的費用を発生させている。

これに対して、自家用車のような個別利用の交通機関から、集団で利用する公共交通機関へのシフトが要求された。同じ環境負荷に対して、1人で利用するより複数でするほうが、1人当たりの環境負荷が圧倒的に小さくなる。乗り合い方式の公共交通が有利である。

また、最近急速に電気自動車が増加していることについて、CO2の発生場所を発電所に移動するだけだという議論があるが、発生場所が集約されることで、環境対策に巨額の資金を効率的に投入できる。

鉄道の場合古くから電気鉄道が普及しており、非電化路線でもバッテリー電車やハイブリッド車など自動車よりも環境技術が進んでいる。

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