副総理説も浮上「菅氏」処遇に岸田首相が悩む事情 参院選で応援依頼が殺到、存在感を増す前首相

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その菅氏は7月22日、日本経済新聞の単独インタビューに応じ、安倍氏死去での心情を吐露した。

その中で「(安倍氏は)改革意欲が強く、官僚ではやれないことをやった。遺志を継ぎ、残された改革を形にするのが大事だ」「やらなければいけない政策は多い。例えば、カーボンニュートラルの目標は自分で宣言した。縦割り打破も必要だ」「菅政権の時に決めた後期高齢者の負担増は国民が問題意識をもってくれていた。改革を形にするのが大事だ」などと力説した。

その一方で、自らが主宰する勉強会については「政策グループみたいなものは立ち上げない」と明言。入閣についても「考えていません」と否定しながら、安倍氏の遺志を継いでの改革実現には強い意欲を繰り返した。これについて、菅氏側近は「喪に服すのは当然だ。勉強会がなくても、岸田首相は菅氏を無視できない」と胸を張る。

「国葬」前後まで続く岸田VS菅の神経戦

そうした状況から、参院選大勝で安倍氏に肩を並べる「岸田1強」態勢構築を狙う岸田首相にとって、9月の人事では「菅氏の取り扱いが最大のカギとなる」(自民長老)のは間違いない。

岸田首相はすでに政権運営の舞台裏で、党内有力者らとの内閣改造に向けた人事調整に着手しているとされる。その中心は集団指導体制になった安倍派との調整で、総裁選で安倍氏が推した高市早苗政調会長や、近い将来の安倍派後継者と目されている福田達夫総務会長の処遇が当面の焦点だ。

さらに、岸田首相の安倍氏「国葬」決断で派生した格好の旧統一教会と安倍派幹部らとの「濃密な関係」(自民幹部)の“清算”も、人事の重要な判断要素に浮上している。岸田首相にとって、「最大派閥で、安倍氏国葬までの通夜状態の維持を求める安倍派」(岸田派幹部)に“忖度”するのか、それとも突き放すのかはその後の政権運営の重大な岐路ともなる。

その中で、安倍氏との盟友関係を踏まえ「内政外交両面での安倍・菅政治の継続」を求めるのが菅氏。すでに同氏周辺からは「菅氏が政権支持に回る場合、その見返りとして、菅グループの党・内閣での重用」を求める声が漏れてくる。

併せて、菅氏が首相在任時に政権運営の一丁目一番地と位置付けていた縦割り行政打破についても、周辺は「岸田首相に具体策実現を確約させる」と意気込んでいるとされる。有力メディアの最新の世論調査で内閣支持率が急落し、新型コロナ第7波の感染急拡大で苦闘する岸田首相にとって、「秋に向け、菅氏との駆け引きで神経をすり減らす状況が続く」ことは間違いなさそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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