副総理説も浮上「菅氏」処遇に岸田首相が悩む事情 参院選で応援依頼が殺到、存在感を増す前首相

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菅氏は昨年9月の総裁選で河野太郎氏(現党広報本部長)を推した結果、いわゆる“冷や飯組”に追いやられた。ただ、その後も無派閥議員を中心とする菅グループは健在で、河野氏を推した石破茂、小泉進次郎両氏も菅氏が事実上の“後ろ盾”だ。

これも踏まえ、菅氏やその周辺は今春、菅政権で目指した政策を実現するための「勉強会」の立ち上げを模索した。しかし、ロシアによる2月のウクライナ軍事侵攻で国際社会の危機が深刻化。岸田政権が危機対応に取り組む中、「事実上の派閥立ち上げ」と受け止められかねない勉強会の発足を延期。さらに、参院選での自民大勝で、勉強会発足自体の断念を余儀なくされた。

ただ、したたかな菅氏は、ここにきて同じ非主流派の二階、森山両派とも連携を強めている。賛否が分かれる「国葬」決断や、コロナ禍再拡大での内閣支持率低下も踏まえ、岸田1強に対抗する非主流派大結集への布石とみられている。だからこそ、次の党・内閣人事での菅氏の取り扱いが、岸田首相の政治的難題となってくるのだ。

菅氏取り込みなら「反岸田結集の芽を摘める」

岸田首相は、政権の長期安定化に向けて「挙党態勢の人事が必要」との考えだ。だからこそ、安倍氏死去後の「党最高実力者」となった麻生太郎副総裁や、麻生氏とともに政権を支える茂木敏充幹事長を続投させる意向とされる。そのうえで菅氏を副総理で取り込めば、文字どおりの挙党態勢となり、「反岸田勢力結集の芽を摘むことができる」(自民長老)わけだ。

これに対し、安倍氏死去の影響も重なって「勉強会」断念を余儀なくされた菅氏の周辺でも、「岸田1強が定着すれば、菅グループは非主流派のまま」との不安から、菅氏入閣への期待を口にする向きも少なくない。ただ、岸田首相を支える党幹部は、菅氏取り込み案に「菅氏の影響力は限定的で、人事での特別な配慮など必要ない」と冷淡だ。

もともと、第2次安倍政権以降、互いに党・内閣の要職にありながら、岸田首相と菅氏の折り合いは悪かった。だからこそ、2020年8月の持病悪化での安倍氏の突然の退陣表明の際、やはり首相との不仲が知られていた二階俊博幹事長(当時)と手を組む形で一気にポスト安倍を射止め、岸田氏を非主流に追いやったのだ。

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