続いて、優秀賞2作品を紹介しよう。
面接で多くの人が不安を感じる沈黙と、オンライン特有の回線問題が組み合わさった、現代ならではの就活での不安を凝縮した作品である。仏頂面のままの面接官はさぞ怖かったことだろう。圧迫面接と勘違いしたかもしれない。
企業側にはしっかりした回線環境で面接に臨んでほしいところであるが、採用担当者もリモート勤務で自宅からアクセスしていることも少なくない。これからは、画面フリーズをすぐに見分けられる目が必要かも。
学生と採用担当者、双方の困った感情、表情を男女関係に例えて表現した、ストレートでありながら非常に共感性の高い秀逸な作品である。
採用担当者の思いとしては、「相思相愛だと思っていたのに、誤解があるなら解きたい。第一志望だと言っていたじゃないか。内定承諾して戻ってきてほしい」と引き止めに必死なのだろうが、得てして別れを決めた人(内定辞退を決めた学生)の心はすでに前(別の会社)向いており、再び振り向くことはまずない、という学生の立場も理解してあげたい。
「玉手箱」で歳を取る
ここからは、佳作に入選した作品をいくつか抜粋して紹介しよう。
オンライン面接が主流となった今でも、たった10分の面接のために遠方からわざわざ学生を呼んで「対面」面接にこだわる企業があることに驚く。
宮城県から東京にある企業の面接のために上京したのだろうか。交通費を抑えるために、新幹線ではなく夜行バスを利用しての移動時間の6時間と、わずか10分という面接時間の明確な対比によって、理不尽さや虚しさをうまく表現できた作品である。人を思いやる力や想像する力を問われているのは、学生ではなく、むしろ採用担当者のほうだろう。
「SPI2」と並ぶ新卒採用向けWEBテストの1つである「玉手箱」を、おとぎ話「浦島太郎」のストーリーに重ね合わせ、WEBテストに向き合う作者の苦労や疲労を軽やかに表した作品である。
「玉手箱」は、短時間で大量の問題を解くことを求められ、終了後には「疲れた」と漏らす学生が多い。もしかしてWEBテストの命名者は本当におとぎ話から名前を取ったのではないかと思わずにはいられないが、もしそうだとすればかなりのブラックジョークである。
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