楽天、「国内磐石」でも残る不安要因とは? 営業利益は1000億円の大台を達成だが・・・

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

では注目される2015年12月期の見通しについてはどうか。三木谷氏は「前年に消費増税特需があった関係で、1~3月期はぼちぼちというところ。ただその後は、かなりいけると期待している」と説明。楽天市場などEC関連事業については「引き続き堅調だ」とし、カードなど金融事業も「盤石と言うのは言い過ぎかもしれないが、非常に安定して積み上げていける」と自信を見せた。

「アントレプレナーは後ろを振り返らない」と言い切った三木谷氏

国内での事業が順調に推移しているのは、会員にグループ内の複数のサービスを使ってもらい、収益を拡大する”楽天経済圏”のモデルが軌道に乗っているからだろう。だが、海外に目を移すと、異なる状況が見えてくる。

楽天は2014年に無料通話・メッセージサービス「バイバー」を手がけるバイバー・メディア(キプロス)と、他社ECサイトに送客する米イーベイツを、ともに1000億円前後と、過去最大の投資規模で相次いで買収。それ以前も、2011年に電子書籍のコボ(カナダ)を236億円で買収するなど、海外で大型投資を続けてきた。

だが、海外事業を含む「その他インターネット部門」の業績は、2014年12月期に349億円の営業損失と、赤字を脱出できていない。三木谷氏はこの日、「その他インターネットの赤字は大幅縮小してきている」「海外でかなり大きな投資をしてきたものが、黒字体質に近づきつつある」と反論。個別の事業についても、電子書籍の「コボ」が黒字に近づいていることなどを強調した。

相次ぐ買収で膨らんだのれん代

楽天の収益は主に、流通総額から差し引いた手数料から成り立つ。そのため、流通総額を継続的に引き上げることは、企業成長に直結するくらい重要である。だからこそ、海外でも楽天経済圏の展開を急ぐ必要があるが、うまくビジネスモデルを〝輸出〟できていないのが現状だ。投資してきた海外事業の収益化を加速する一手として、楽天はこの1月、台湾で「台湾楽天カード」の発行に踏み出した。台湾の消費者が「台湾楽天市場」での買い物や、楽天トラベルのホテル予約などにも使う、相乗効果を期待している。

国内だけではいずれ頭打ちになる、との危機感が楽天にはある。イーベイツの買収で、グループのEC流通総額に占める海外比率は高まったが、2015年12月期はまだ10%台にとどまる見通しだ。さらには企業買収を続けてきたことで、のれん代が膨張していることもリスク要因の一つ。2014年12月末ののれん代は約3630億円と、1年前の1420億円から、倍以上も膨らんだ。楽天の場合、のれん償却を必要としない国際会計基準を採用しているため、足元の営業利益には響かない。それでも、不振が続いていれば、どこかの段階で損失計上をしなければならず、それが巨額になる可能性もある。

会見で営業利益1000億円到達の感想を問われた三木谷氏は、「アントレプレナーは後ろを振り返らない。もう次の目標に向かって進んでいる」と、笑みを浮かべた。国内で快走を続けてきた楽天経済圏を、世界規模でも収益化のレールに乗せられるかどうか。そろそろ結果が求められる時期と言えそうだ。

山田 泰弘 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事