──ご自身、「日本人でもありドイツ人でもある」と言われますが、「でも」のところを日本人にきちんと理解してもらえますか。
難しいですね。「二足のわらじ」はわかっても、アイデンティティーは1つという思い込みが日本では強く、ハーフの人はどちらかを選ぶべきだと考えている人が多い気がします。
例えば2011年の東日本大震災のような危機的状況になると、私のような人間は困った立場に追いやられることがあります。津波による原発事故で放射性物質が拡散したとき、米国人やドイツ人など多くの外国人が東京から避難しました。そうなると、私は「日本人として日本にとどまるのか」「ドイツ人としてドイツに戻るのか」といった、踏み絵を迫られるかのような質問をされました。
日本人のルーツはさまざま
──「踏み絵」ですか。そういった二者択一を迫ることは、もちろん多様性ではありませんよね。
この場合の踏み絵とは、「あの人はこういう行為をしたから日本人ではない」「あの人はこれをしたからやっぱり日本人だ」という判断基準のことです。
テニス選手の大坂なおみさんに対しても、日本国籍の彼女の言動で気に入らないことがあると、「彼女は日本人ではない」と批判する日本人は少なくありません。彼女でさえも、日本人からすぐに踏み絵を強要されがちです。
日本でも外国人が増えて、彼らの子どもたちが生まれて、その子どもたちが……と、さまざまなルーツを持った人が増えています。彼らの中には、私のように両親の国籍やアイデンティティーそれぞれを考えて、自分なりの拠り所があります。日本では外国のほうのアイデンティティーだけを見られて、「であれば、英語は話せるよね」「その国の料理や文化を教えて」と言われがち。でも、本人は日本での生活が長くて、「自分は日本人だ」と思っているケースも多いのです。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら