CO2と水素の合成燃料は脱炭素の切り札になるか 成蹊大学の里川重夫教授に聞く合成燃料の現在地
――合成燃料はどこまで実現している技術なのでしょうか。
技術自体は昔からある。ナチス時代のドイツでは輸入石油のほぼ2倍の人造石油を作っていた。大量の石炭から油を作っていたわけである。
化石燃料を使ってはいけない
――合成燃料は脱炭素の切り札になるということでしょうか。
そんな簡単な話ではない。合成燃料はもともと石油以外の化石燃料から石油を作る目的の技術だ。しかし、今望まれているのは脱炭素だから、化石燃料を使ってはいけない。化石燃料を使わないで原料を調達し、それを合成して初めて脱炭素につながる。
グリーン水素をどうやって調達して、さらにCO2をどうやって集めるか。そこに課題がある。再生可能エネルギー(再エネ)由来の電力から電気分解でグリーン水素を作ることはできるが、コストの問題がある。CO2の濃縮・回収も難しい。化石燃料からでなければ、大気からCO2を回収しないといけない。
――火力発電所などから出るCO2を回収して利用するCCU(二酸化炭素の回収・利用)が想定されています。
火力発電所は石炭や天然ガスを掘って燃やしている。そこで出たCO2から合成燃料を作っても、それを使えば結局CO2を出してしまうので意味がない。
――大気からCO2を回収するDAC(ダイレクトエアキャプチャー)という技術を使えばよいのでしょうか。
DACの実用化は設備的にもエネルギー的にも相当難しい。個人的にはバイオマス利用が有望と考えている。バイオマスなら植物の成育時に大気からCO2を吸収している。一般廃棄物の75%がバイオマス由来なので、廃棄物のバイオマス発電の電力を使って電気分解した水素と、排ガスに含まれるCO2を回収すれば合成燃料を作ることができる。
ただし、ここで得られる水素量は排ガス中に含まれるCO2量の1%にも達しないので、大量の再エネ由来のグリーン水素を別途獲得することが条件となる。
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